哀れな中年男性のかすかな声が聞こえる。 「助けてくれ!もう絶対にしない。信じてくれ!」 澄香によって光線銃で100分の一に縮められた男は必死で謝る。 「私のお尻を触るなんて、10年早いのよ!」 澄香は、問答無用で彼を黒革のブーツで踏みにじった。小さくされた中年男性にとって、澄香のブーツは凶器そのもの。一瞬ですり潰され、潰れた肉の塊と化した。 「これですっきりしたわ。」 一人の人間を殺した罪悪感よりも、むしろ痴漢という犯罪者を自分の手で裁いたという満足感を澄香は感じていた。 「しっかし、澄香ってばよく痴漢にあうわね。」 あきれたように翔子が言う。翔子は澄香と同じ大学に通う親友。澄香が人間を100分の一に小さくできる光線銃を持っていることを知っているただ一人の人間だ。 「あたしなんか大学入ってから一度もあったことないよ。」 それもそのはず。翔子の服装はギャルそのもの。髪を染めて、厚化粧。光沢のある派手な柄のミニスカートに厚底ブーツ。こんなのと関わり合いになったら、ただじゃ済まないという雰囲気さえ漂わしている。 対する澄香は、黒髪でロングのストレートヘア。ナチュラルメークで、年齢よりもやや幼く見える。それでいて革のミニスカートにロングブーツを履いているので、世間知らずの高校生が精一杯背伸びして大人っぽく見せようとしている感じである。 「本当、しょっちゅう被害にあって迷惑よ。翔子がうらやましいな。」 「澄香の服装に問題ありじゃない?もっと迫力ありそうな格好するとか。あたしみたいにね。」 「それじゃあ、男の思うつぼじゃない。悪いのはあくまでも痴漢のほう。その悪い人達のために、あたしが気を使って、自由なおしゃれができないなんて、おかしいわよ。」 「まあ、そうだけど…。」 話に夢中になって気づかなかったが、彼女達の周りをいつのまにか数人の男たちが取り囲んでいた。 「お話し中にすいません。」 彼らのうちの一人が声をかけてきた。 「お嬢様方、今、何かを踏み潰しましたね。」 「え、ええ…。」 澄香がうなずく。 「やはり!僕達は、あなたのような女性を待っていたのです!」 突然、彼は歓喜の声を上げる。 「実は僕達はクラッシュマニアでして、美しくか弱い女性が何のためらいもなくさまざまなものを踏み潰すのに非常に興味があるのです。」 「あ、知ってる。前に付き合った彼氏の友達がそうだった。」 翔子が相づちを打つ。このあたりの交友関係の広さは、さすがに遊び人と呼ばれるだけの事はある。 「わかっていただけるのなら、話は早い。要は踏み潰しの写真を撮らせていただき、お話しを少々伺いたいのです。」 「いいわよ。そう言うことならお安い御用よ。」 男たちの礼儀正しい態度に、翔子はすっかり乗り気だ。だが、痴漢の被害にあったばかりの澄香は警戒心を隠しきれない。 「ちょっと、翔子ったら、勝手に安請け合いしていいの?何されるかわからないわよ。」 「心配いりません!」 澄香の不安を、真っ先に男たちが否定する。 「僕達は、一切あなた方に手を出すつもりはありません。僕達が唯一触れることが出来るのは、お嬢様方が履いておられるその素晴らしいブーツの靴の裏だけです。安心していただいてけっこうです。どうしても不安でしたら、人通りの多い場所で撮影させていただいてもかまいません。」 「大丈夫。あたしは信用しているから。好きなようにしてあげるわ。写真でも、話でもね。」 澄香より先に翔子が答えた。 「ありがとうございます。」 なんだかよくわからないうちに、澄香は謎のクラッシュマニアの男たちのペースにのせられていた。 「さっそく質問をさせていただきます。」 男たちは全部で四人。全員自称クラッシュマニアだそうだ。その中の一人が代表質問の形式をとる。 「ぶしつけな質問ですが、先ほどそちらのお嬢様が踏み潰したものは、何だったのでしょうか?」 「それは…。」 答えられずに言葉を濁す澄香に代わって、翔子が答える。 「あれは人間よ。小さくして踏み潰したの。こびとを踏み潰すのって、すごく気持ちがいいんだから。」 「ちょっと、翔子!」 澄香が止めるが遅かった。しかし、彼らは人間を踏み潰したのを非難するどころか、かえって興奮して話に夢中になった。 「踏み潰したのは人間ですか?それはますます素晴らしい!でも、人間を小さくするなんてこと、できるのでしょうか?」 「簡単よ。どう?あなた達も実験台になる?物が潰れるのをただ見るよりも、自分が踏み潰されるほうが貴重な体験だと思うけど。」 「本当ですか?」 翔子に言われて、彼らは意気込む。 「実は、僕達、小さくなって女性に踏み潰されて死ぬのが究極の夢だったのです。僕達四人は同じ夢を持った者の集まりなのです。お願いします!どうか、その美しい脚で、ブーツで踏んでください!」 彼ら四人はそろって懇願する。 「ということで、澄香、お願い。」 翔子に言われた澄香は、むっとした。 「ちょっと、勝手に決めないでよ。何であたしが男の言いなりにならないといけないのよ。」 「いいじゃない。このまま逃がすと、秘密をしゃべられちゃうよ。だから、どっちみち小さくして踏み潰すしかないでしょ。それに、たまには男の人の希望をかなえてあげるもの光線銃の有効利用になると思うけどな。」 「もう、翔子ったら。」 ぶつぶつ言いながらも、澄香は光線銃を取り出し、彼らを100分の一の大きさに小さくした。 「さてと。」 4人のこびとを持ち上げて人目につかない公園へと移動すると、翔子が口を開いた。 「全部で4人だから、獲物は2人ずつね。」 「その件なのですが。」 口を挟んだのはこびと達。 「実は、同じクラッシュマニアと言っても、僕達にはそれぞれこだわりというものがあります。たとえば、足で踏み潰されるのが好きな人もいれば、手で握り潰されるのが好きな人もいます。ですから、僕達の希望の方法で潰していただけないでしょうか?」 「ええ、いいわよ。」 「ありがとうございます!」 彼らはうやうやしく礼をした。絶対にかなわないと思われていた夢が、今まさにかなえられようとしている。彼らは、この願いさえかなえられれば、もうこの世に未練はなかった。 「まずは、あなたからね。」 翔子が一人のこびとを摘み上げる。彼は今まで代表質問をしてきた、4人の中心人物だ。 「はい。僕は、あなた様のブーツの中でナマ足で踏み潰されたいです。蒸れたブーツの中で、臭いを嗅ぎながら踏み潰されるなんて、まさに理想的な死に方です!」 「はい、はい。わかった。願いを叶えてあげる。」 翔子は右足のブーツを脱いで、彼を中に放りこんだ。 ブーツの中敷には翔子の足の形に黒い汚れがついていた。ブーツの中で足の汚れが蒸れて細菌が繁殖し、革の匂いと交じり合い、この世の物とは思えないような臭いを発していた。彼は思いきり息を吸い込み、これから迫り来る運命に対して覚悟を決めた。 「じゃあ、行くよ。」 翔子がブーツを履く。ブーツの中の彼から見ると、ストッキングに包まれた彼女の巨大な足が天から降ってくる。その足は彼など存在しないかのように、いとも簡単にブーツの中敷をしっかりと踏みしめた。その瞬間彼は念願が叶い、翔子の足の裏の一部となった。潰された彼の体は、狭いブーツの中に手足や内臓を飛び散らせた。 「やだ〜。靴の中で潰れて何か気持ちが悪いよ。」 翔子が笑いながら言う。言葉とは裏腹に、初めてのナマ足で直に踏み潰した感覚を楽しんでいるようだ。 「じゃあ、次は澄香の番だね。」 澄香は、残り3人のこびとのうち、一人を摘み上げた。 「次はあなたよ。」 澄香に摘み上げられたこびとは、目を輝かせる。 「僕は、お尻で潰されたいです。座布団のようにぺしゃんこに。あ、別に直接お尻でじゃなくて服を着たままかまいません。ただ、希望としてはお尻の形がはっきりと出る、ぴっちりとした服が良かったんですが。」 ちなみにこの時の澄香のはいているのは、黒い革のミニスカート。お尻の形は、しゃがむとそこそこ浮き出る程度だ。 「でも、ミニスカートも好きなんで、そのままで結構です。僕を地面に置いて、その上に座ってください。」 「え〜!?」 澄香がしかめっ面をする。 「このスカート高かったのに、汚れるのやだな。」 「仕方ないよ。こびとの最期の願いなんだから。かなえてあげなよ。」 他人事だと思って翔子が言う。 「でもなあ…。」 澄香はいやな顔をする。だが、この時澄香の頭の中にある考えがひらめいた。 「そうだ、ビニール袋を敷いてその上に座ればいいや。ビニールを挟んでも、お尻に潰されることには変わりないんだから、文句はないでしょ。」 澄香に言われて、彼はしぶしぶ承諾する。本当はお尻の下ですり潰されてスカートの一部になりたかったのだが、彼女がいやだと言うのなら仕方がない。見たところおしゃれに気を配っていそうな女性なので、お尻に潰れた死骸をつけたまま歩くのはいやなのだろう。汚れが目立たないように直接下着で座ってもらうことも考えたが、さすがにそこまでは言いだせなかった。苦渋の選択の末、彼は譲歩した。 「それで結構です。お願いします。」 「じゃあ、いくわね。」 さっそく澄香は、彼を公園のベンチの上に置いた。そして、彼の上に透明な薄いビニール袋をかぶせた。 「本当にいいのね。座るわよ。」 澄香はビニール袋の上に腰を降ろした。 ビニール袋の下の彼から見れば、巨大なお尻がものすごい早さで落下してくる。お尻がビニール袋に触れた瞬間、彼は悲鳴を上げ、ビニールとベンチの狭い隙間に潰れて飛び散った。彼も念願かない、女性のお尻の下で圧迫死することができた。 「やだ、何か潰れた。変な感じ。」 澄香はすぐに立ちあがり、汚れてもいないスカートのお尻のあたりを手で払った。 「大丈夫だよ。何もついていないって。ほら、こいつ、ビニール袋の下でぺったんこだよ!」 潰れた彼の死骸を見ながら、翔子がおかしそうに言った。 「じゃあ、今度はこいつだ。」 翔子が3人目のこびとを拾い上げる。 「あなたはどうしたいの?」 「はい。僕は、あなた様に食べられたいです。どろどろに消化されて、あなた様の体の一部になりたいのです。」 彼は希望を語った。彼の趣味は他の3人とはやや異なっていて、歯で噛み砕かれて死にたかったのだ。噛み砕かれた後にそのまま飲みこんでもらえば、惨めな死体をさらさずに済むというのもその理由の一つであったが。 「ええ!?」 翔子がびっくりする。踏み潰しを期待していた翔子にとって、この答えは予想外だった。 「どうするの、翔子?こんな汚いのを食べちゃったらおなかこわすかもよ。」 いつも翔子に振りまわされてばかりの澄香が、ここぞとばかりにつっこみをいれる。 「平気よ!やってあげるわ!」 だが、翔子はやる気だ。 「願いを叶えてあげる。食べれば文句ないんでしょ。あたしは胃袋が丈夫な方だから平気よ。」 翔子は摘み上げたこびとを口の中に放りこんだ。そして、一気に飲みこんだ。 「何か変な感じ〜。」 翔子の喉元をこびとが落ちて行くのを感じられた。食道を落ちて行く時に、彼は最後の力を振り絞り途中の内壁にしがみつこうとしたが無駄だった。間もなく彼は胃袋に到達し、暗い、強酸性の胃袋の中で骨も残さず溶かされてしまった。 「まあ、人間に毒はないでしょ。」 翔子はお腹のあたりをさすりながら言った。 残されたこびとはあと一人。だが、彼は迷っていた。仲間がいた時は死ぬことに何も疑問に思わなかった。だが、こうして自分一人が残されると、果たしてこのまま死んで良いのかという疑問がわいてきた。 それに加えて、ベンチに転がっている二人目の仲間の潰れた死骸が恐怖に拍車をかけた。お尻に潰されただけであれほどぺしゃんこになるのだ。これが、全体重をかけた足で踏まれたらどうなるのか。考えれば考えるほど恐怖を感じてきた。 「最後はあなたよ。どうするの?」 澄香が声をかけたのはまさにこの時。踏み潰されることに恐怖を感じていた彼は、思わぬことを口走ってしまった。 「僕は、女性器の入口から中に入りたいです。そして、精子のようにあそこを探険して死にたいです!」 「やだ〜!!」 澄香が思わず声を上げる。 「あはは。やったじゃん澄香!これで初体験できるじゃない。」 翔子がさっきの仕返しとばかりに、澄香をからかう。 「絶対いやよ!」 澄香がむきになって拒絶する。 「何だかんだ言って、男ってみんなエッチなことしか考えないんだから。」 「そんな事ないわよ。彼らは踏み潰されたいという、ちょっと変わった趣味を持っているけど、紳士的だったじゃない。手当たり次第に女を襲おうなんて考えていないわよ。」 翔子が澄香をなだめる。 「だから、願いを叶えてあげなよ。死ぬ前の最期の願いなんだし。それに、あたしだって我慢してさっきのこびとを食べたんだから。」 「でも、いやよ。こんなエッチな男の願いなんて叶えてやる必要ないわ!」 澄香は足を持ち上げると、こびとの上に踏み降ろす。願いが叶えられなかったこびとの悲鳴が聞こえた。しかし、ブーツの丈夫な靴底にとってはこびとなんて存在しないに等しい。靴底はしっかりと地面を踏みしめ、彼の体は靴底と地面の間で潰されて飛び散った。 ちょっとばかり高望みをしたがために、彼の願いはかなわぬ願いとなり、彼にとっては一番悲惨な死に方をしたのだった。 「やっぱりこびとは靴のまま踏み潰すのが一番ね。汚れなくて良いし。靴の裏なら、歩いているうちにきれいになっちゃうもんね。」 すっきりした表情で澄香が言う。男たちとの約束を無視して願いを叶えなかった罪悪感は全く感じていない。 「あーあ。これで澄香は全国の男を敵に回しちゃったよ!」 翔子が笑いながら言う。 「平気よ!私は、私。自分の生きたいように生きるの。男のご機嫌をとりながら生きていくなんて私らしくないよ。」 「強がっちゃって。だから澄香は彼氏ができないのよ!」 「あー、言ったな〜、翔子!」 「あはは。ここまでおいで〜。」 翔子と澄香は、自分達があの世に送った男たちのことなど忘れて、笑いながら駆けて行った。 |