少女達のお仕置き(前編)

作:大木奈子

「晶子、今度の休み、部活ない日だよね。」
「うん。そだよ。」
 ある日の午後、紺野絵梨佳が相原晶子に声をかけた。
「じゃあ、暇でしょ。遊びにおいでよ。面白いもの見せてあげる。絶対来てね。」
 絵梨佳の面白いものとは、残酷なこびといじめの共犯者に仕立てあげることである。そのことに気づいた晶子が断わろうとした時には、すでに絵梨佳は立ち去った後だった。

「彩美も今度の休み暇よね。」
 今度は、絵梨佳は村野彩美に声をかける。
「あの、私、塾の宿題が…。」
「宿題なんて、いつでもできるわよね〜!」
「はい…。」
「じゃあ、暇なのね。面白いもの見せてあげるから、遊びにおいで。あんたが友達に誘われるなんて、めったにないんだから。」
 こうして、彩美もまた絵梨佳に付き合わされることとなった。

 そして、次の休みがやってきた。集合場所の絵梨佳の家に晶子が着いた時には、すでに彩美と絵梨佳が門の前で待っていた。
「いらっしゃい。じゃあ、さっそく始めましょ。場所はこっちよ。」
 絵梨佳は2人を案内する。2人が案内されたのは絵梨佳の家の地下にある、倉庫ような場所だった。シャッターを開けると、中はカビの混ざったような湿った臭いがする。
「えー!?ここなの?」
 晶子が顔をしかめる。
「友達を呼ぶんだから、もっといい場所にしてよ。絵梨ちゃんの部屋とかさ。」
「うふふ。ここが一番良いのよ。男をいじめるにはね。完全防音だから、いくら騒いでも平気なの。」
 絵梨佳が電気をつけた。地下室は倉庫らしく、さまざまながらくたが置かれていたが、3人で遊ぶには十分な広さであった。

「じゃあ、さっそく始めましょ。」
 そう言うと絵梨佳は呪文を唱えた。呪文を唱えた絵梨佳が右足を持ち上げると、その靴底から体長数センチの虫のような生き物がはがれ落ちた。
 その生き物こそが絵梨佳の魔法により小さくされた男であった。彼は、絵梨佳が玄関を出て晶子と彩美を迎え入れ、地下室に案内するまで、ずっと絵梨佳の靴底で踏み潰されていた。
「いつも小さくした奴で遊んであげてるけど、それじゃあつまんないのよ。弱すぎて。だから、今回は元の大きさに戻して遊ぼうかなって思ったの。面白そうでしょ?」
「それは良いんだけど、絵梨ちゃん。何であたし達まで一緒なの?」
 晶子が尋ねる。
「友達だからに決まってるじゃない。楽しい事はみんなで分けないと。そう思わない?」
「まあ、ねえ…」
 いまひとつ晶子は乗り気でない。だが、そんなことは関係なく絵梨佳は話を進める。
「とにかく始めるよ。」
 絵梨佳が呪文を唱えて、こびとを元の大きさに戻した。

 彼は25歳のサラリーマンだった。その日は珍しく仕事が早く終わり、明るいうちに退社することができた。そして楽しいはずの帰宅途中、雑踏の中で彼は絵梨佳とすれ違った。彼の記憶の中では、絵梨佳とすれ違った時少なくとも1メートルは離れていたはずだ。手の届く範囲ではなかったはずである。
 しかし、絵梨佳は突然大声を上げた。
「キャー!この人触った!痴漢よ!」
 瞬時に周囲の目が冷たいものに変わる。証拠がなくても痴漢と言われれば、周囲の人間は彼を犯罪者扱いし、誰も助けてくれようとはしない。もちろん裁判でも同じで、なかなか冤罪を認めてくれない。
 うろたえている彼の腕を絵梨佳がつかんだ。
「さあ、警察に行きましょう。それとも、お金で解決する?」
 絵梨佳が彼の顔を覗きこむ。
「待て、俺はやっていない。何かの勘違いだろ。」
 彼は無罪を主張する。だが、意外な事に絵梨佳は彼だけに聞こえるように小声でささやいた。
「この際本当にやったかどうかはどうでもいいのよ。どうせ裁判しても、あたしがやったと言えば有罪になるんだから。犯罪者になるの、嫌でしょ。それなら、お金を払って放してもらった方がいいと思わない?欲しい服があるんだけど、あと5万円足りないのよ。」
 だが彼は、してもいない事を認めて、お金を払う気はなかった。逆にこれは彼女による脅迫ではないか。痴漢裁判がいかにずさんな状況下で行なわれているかを知らない彼は、逆に絵梨佳を脅迫と名誉毀損で訴え、裁判で争うことに決めた。
「分かった、警察に行こう。俺は本当に触っていないんだ。話せばわかる。」
「わかってないなあ、おじさん。まあいいや。こっちが交番への近道だから、行きましょう。」
 絵梨佳に導かれて、彼は人通りの少ない道へと連れてこられた。そして、周囲に人の目がなくなった瞬間、彼は意識を失い、こびとにされていた。それから彼は一昼夜絵梨佳の靴底の一部として過ごした。

 今ようやく靴底から解放され、元の大きさに戻った彼だが、踏まれ続けた衝撃が全身に残り、動く事すらできなかった。
「おい、起きろ〜!」
 絵梨佳が声をかけ、靴のまま頭を蹴った。
「ノリが悪いのよ!もっと激しく暴れてくれないと。寝たきりの男いじめてもつまんないじゃん。」
 さんざん踏み潰しておいて体力を奪っておいてから、よくこんなことが言えたものだ。だが、彼女は容赦しない。
「そうだ、こうしましょ。今から、晶子と決闘してみてよ。勝ったら自由にしてあげる。でも、負けたらまた一生靴の裏で生活してもらう。これならやる気になったでしょ?」

「ちょっと待って、絵梨ちゃん。なんであたしがこんなのと…。」
 男よりも先に、晶子が待ったをかける。
「だって、晶子喧嘩好きでしょ。小学校の時、さんざん男の子と喧嘩したって聞いたよ。」
「あれは、昔の話で…。」
「もう遅いって。ほら、あいつ、やる気みたいだし。」
 絵梨佳の言う通り、彼はすでに立ちあがって晶子をにらみつけている。
「大丈夫。ピンチになったら、助けてあげるから。」
 絵梨佳は晶子にそっと耳打ちする。
「じゃあ、始めて!」
 絵梨佳の始めの合図で男が晶子に襲いかかる。自由を求める男は必死だった。これに勝てば、靴底で踏まれつづける生活から解放されるのだ。相手は中学生の少女であるが、彼も一晩中靴底で踏まれつづけて体はボロボロだ。普段なら子ども相手に大人が本気を出すのはみっともないが、状況が状況なだけに、彼は容赦せずに全力で闘った。
 勝負は男が優位のまま進んだ。いくら晶子が喧嘩慣れしているとはいえ、小学生の時に同級生の男の子相手に喧嘩しただけである。成人男性相手では力の差は歴然で、弱冠13歳の少女に成人男性に勝てるだけの力はない。徐々に晶子は追い詰められていった。
 晶子を追い詰めた彼は、いよいよとどめの一撃を加えようと一歩踏み出した。しかし、その瞬間を狙って、絵梨佳が足払いをかけた。完全に予想外の他人からの攻撃に思わずバランスを崩す男。バランスを崩した一瞬に晶子の蹴りが股間に炸裂し、勝負は事実上この時についた。思わずしゃがみこんだ男は、晶子から蹴りの集中砲火を受けて力尽きた。

「はあ、危なかった。」
 晶子がため息をつく。
「しかし、中学生の女の子相手に本気でかかってくるなんて、最低の男ですね。」
 黙って一部始終を見ていた彩美が言う。
「まったくもう。絵梨ちゃんたら、何であたしをこんな目にあわせるのよ!」
 晶子が絵梨佳にくってかかる。
「あら、晶子。あたしがあそこで足払いをかけなければ負けてたかも知れないのよ。いわば私は命の恩人。その言い方はないでしょ。」
「でも、あたしとこんな奴を喧嘩させることもないでしょ!」
「落ちついてよ、晶子。あたしは冗談で言っただけよ。それをこいつが勝手に本気にして襲ってきたんじゃない。つまり、こいつは元々女の子に平気で襲いかかれるような悪い奴なのよ。常識で考えて、いい大人が女の子と本気で喧嘩しようなんて思わないでしょ。」
「そりゃそうだけど。」
 いまだに不満の表情を浮かべる晶子。
「だから、悪いのはあたしじゃなくて、こいつよ。こういう悪い奴にはみんなでお仕置きしましょう。ねっ!」
「わかった。絵梨ちゃんに当たっても仕方ないもんね。」
 晶子もしかたなくうなずいた。

 男を縛り上げて動けなくしてから、絵梨佳たちは彼を蹴り起こした
「いてて…。」
 目が覚めた男は、絵梨佳の姿を見ると襲いかかろうとしたが、全身を縛り付けられて動くことができない。彼は絵梨佳をにらみつけたまま言った。
「て、てめえ、よくもやってくれたな。俺とあいつとの一騎撃ちだったのに、邪魔しやがって!」
 しかし、男が動けないのをいいことに絵梨佳は余裕の表情を見せる。
「あーら、誰がそんなこと言った?あんたが晶子に勝てば自由にしてやるとは言ったけど、あたしが手助けしないとは言っていないよ。それに、あたしって優しいから、困っている友達見ると助けたくなるのよね。」
「そんなの屁理屈だ!俺をこんな目に合わせやがって!ただじゃ済まさねえぞ!」
「はい。負け犬の遠吠えはここまで。」
 絵梨佳はそう言うと、いきなりジャンプして男のお腹の上に靴のまま両足で飛び乗った。いくら中学生の女の子相手とはいえ、不意打ちはこたえたらしく、彼は「うっ!」とうめき声をあげて苦しんだ。
「晶子も彩美もやりなよ。おもしろいよ、人間トランポリン。」
 絵梨佳は男のお腹の上で飛び跳ねる。靴を履いたままなので、靴底の凸凹がお腹の皮膚に食い込み痛みを倍増させる。その上、飛び跳ねる勢いも加わるため、彼は耐えるのに精一杯でなす術もなかった。
 絵梨佳が終わると次は晶子の番だ。ついさっき男と対決して危ない目に合わされた晶子は、容赦なく男のお腹の上で飛び跳ねた。運動部の晶子は、筋肉質で絵梨佳よりも体重が重い。その上ジャンプ力もあるので、飛び跳ねた時の衝撃は絵梨佳の時とは比べ物にならないほど大きい。衝撃をくらうたびに、このままでは内臓が破裂して踏み殺されてしまうのではないか、と彼は恐怖を感じていた。
 晶子の次は彩美だ。最初、「私、こんなひどいことできません。」と訴えた彩美だが、「自分だけ良い子ぶるのは許さない。」という晶子の説得に押されて、男のお腹に乗っかった。おめかしした彩美は、靴もおしゃれに革靴を履いている。体重は3人の中で一番軽いが、靴底の固さは彩美の靴が一番だ。男をいたぶるのに似合わない服装のまま、彩美は彼のお腹の上でジャンプし続けた。飛び跳ねる時の衝撃は少ないが、固い靴底により彼のお腹の皮膚に傷が刻みこまれた。
 彩美の人間トランポリンが終わったとき、彼は靴跡による無数の傷をお腹に残し、ぐったりとして動くことすらできなかった。

「まだまだ休んじゃだめだよ。今度は顔に乗ってあげる。」
 休む間もなく、今度は絵梨佳が彼の顔面に両足をそろえて乗る。もちろん靴を履いたままだ。少女に靴のまま顔に乗られるのは、屈辱の極みだ。しかし、今の彼には抵抗するだけの気力も残っていなかった。もっとも、たとえ気力があったとしても全身を縛り付けられているので何もできないはずだが。
「ちょっと、まずいよ、絵梨ちゃん。スカートのまま顔の上に乗ったら見えちゃうよ。」
 晶子が注意する。晶子はジーンズを穿いているが、絵梨佳はミニスカートである。
「平気、平気。両目をふさいで乗れば大丈夫。」
 絵梨佳の言う通り、顔の上に乗るとき、足で男の目をふさいでしまえば見られる心配はなくなる。逆にさっきのようにお腹の上に乗ってトランポリンをするときの方が、丸見えになってしまうのだ。ただ、さっきの男の様子を見る限り、彼にスカートの中を覗く余裕などなかったはずである。もっとも、絵梨佳はミニスカートを穿くときはいつもそれなりの用意をしているので、下着を見られる心配はないのではあるが。
 男の顔に乗ったまま、絵梨佳は足踏みを始める。狭くて不安定な顔面での足踏みなので、何度がバランスを崩しそうになるが、足を踏ん張って持ちこたえた。絵梨佳が力を入れて足を踏ん張るたびに、男の顔に無残な靴跡が刻みこまれた。絵梨佳が足踏みを終えて降りたとき、彼の顔面には絵梨佳の靴底による傷と靴跡だけが残されていた。
 踏む方も裸足であれば、相手の顔面に傷をつけるほどの激しい踏みつけをすると、自分の足にもそれなりの衝撃が来る。そのため、傷がつくほどの激しい踏みつけはそう簡単にはできない。しかし、踏む方が靴を履いていると、男の顔面に傷や靴跡を残すような強烈な踏みつけをしても、靴がクッションの役割をしてくれるので足への衝撃は少ない。だから、絵梨佳は強く踏みつけている意識がほとんどないのに、踏まれる男には耐えがたいほどの苦痛を与える結果になってしまった。
 絵梨佳が終わると、次は晶子の番だ。男が縛られて身動きができないのをいいことに、晶子は遠慮なく靴のまま顔面に乗った。そして、その場で足踏みをする。足踏みというより晶子の場合は足に体重を乗せて地面に叩きつけるように、男の顔を踏みつけた。男の受ける衝撃は絵梨佳の時をはるかに上回り、顔ははれて紫に膨れ上がり、皮膚が裂け鼻血と混じり合い、みるも無残な顔になってしまった。
 最後は彩美の番だ。血まみれの上に内出血で膨れ上がった男の顔面に、靴を履いたまま乗る。彩美には晶子のように強烈な踏みつけはできない。しかし顔面が腫れあがった今の状態では、踏みつけの強烈さよりも靴底の固さが効いてくる。彩美の踏みつけにより傷口から血が溢れ出し、血の靴跡を残されることとなった。
 ようやく3人の少女による強烈な顔面踏みつけが終わった。怪我をさせないようにという歯止めがないため、彼女達は容赦しなかった。終わったとき男の顔は、もとの顔が想像もつかないほどに傷つき、腫れあがり、変形していた。

「た、助けてくれ。」
 顔面攻撃の後、男がかすれた声をあげる。踏みつけられて歯はぼろぼろに欠け、口の中も血だらけでしゃべるのさえやっとである。
「何言ってるの?晶子とやる前に、負けたら靴の裏で生活するって約束したじゃない。だから今、あんたを靴の裏で踏んであげているんじゃない。それとも靴の裏で生活するという約束を破るの?」
 絵梨佳には、男を哀れむ気持ちは全くない。
「でも、このままじゃ死んじゃいますよ。」
「じゃあ、死なないように、またこびとになって靴の裏で生活する?」
 絵梨佳の提案に、彼は首を横に振った。ここまでひどい目に遭わされてもまだ、死なないこびとになって靴の裏に貼りついたまま踏まれ続ける方がつらいのだ。
「わかったわ。こうしましょ。今日1日あなたは私達3人の言うことに全て従うの。そうしたら、その後どうするか、人生を決める選択肢を与えてあげる。そのかわり、言うことを聞かなかったら、その時から一生こびととして靴の裏で暮らすの。どうかしら?」
 とてつもなく残酷な提案であるが、今の彼にはこの提案を飲む以外に選択肢はなかった。
「ものわかりがいいのね。じゃあ、最後まで言うことを聞けるようにがんばってね。」
 絵梨佳はそう言うと、場違いなまでのかわいい笑みを浮かべた。

「じゃあ、疲れたし、このへんで休憩にしようか?」
 絵梨佳が、地下室の片隅からお菓子の入った袋を持ってくる。
「おやつでも食べない?ジュースもあるよ。」
「あ、ありがと。じゃあもらうよ。」
 晶子が袋に手を伸ばす。
「私もいただきます。」
 彩美も、晶子に続いてお菓子の袋に手を伸ばす。袋の中身はスナック菓子だった。絵梨佳と晶子、彩美の3人は、男のことなど忘れたかのように、お喋りに夢中になりながらお菓子を食べていた。

 ある程度お腹が膨らむと、3人は再び彼のお仕置きをはじめる。絵梨佳たちは、彼を縛っていたひもをほどき、今度は犬のように首にひもを結びつけた。
「私達だけおやつを食べて、あいつだけ食べないのはかわいそうよね。」
 絵梨佳が言う。いままで先頭に立って男を痛めつけてきた絵梨佳の発言に、晶子が目を丸くする。
「え!?絵梨ちゃんらしくない。どうしたのよ?」
「あら、あたしだって女の子よ。女として気が利くのは当然じゃない。」
 そう言うと、絵梨佳は袋からスナック菓子をつかみ、豆まきのように床に投げつけた。男は手を伸ばして、スナック菓子をつかもうとした。
「待って!」
 絵梨佳が、その手を蹴り飛ばす。
「あたし、犬が好きなんだ。だから、あんたには犬の役をやって欲しいなあ。」
 何を言いたいのかわけもわからずきょとんとする男。そんな男に、絵梨佳はいらいらしたように言う。
「まだ分からないの?犬が手を使って食べる?そんなことないでしょ!直接口でくわえて食べなさいよ!」
「なるほどね。」
 晶子が納得したようにうなずく。絵梨佳が彼にお菓子を与えようと言い出した理由が、かわいそうだからではなく、犬みたいに扱いたいからだということに晶子は気づいた。やはり、絵梨佳は予想以上に残酷だと晶子は思った。
 当事者の男もそうだ。自分のことをかわいそうと哀れんでくれたのかと思いきや、実は人間以下の犬として扱うためだったとは。彼が想像していた以上に、絵梨佳は恐ろしい少女だ。
 しかし、それでも、彼にとってはせっかく与えられた食料である。昨夜から靴底で生活していたために何も食べていないので、スナック菓子でもごちそうだ。犬みたいに惨めな食べ方しか許されないが、それでも食べられないよりはいい。彼は近くに落ちていたスナック菓子に顔を近づけて、口でくわえようとした。
「待って!」
 再び絵梨佳が待ったをかけて、顔面を蹴り上げる。
「袋から出しただけのお菓子じゃつまらないでしょ。女の子の料理したものが食べたくない?」
 男ととってよくわからないことを絵梨佳が口走る。彼はわけがわからずきょとんとする。
「何をボーッとしてるのよ!このままお菓子を口にするより、私達の愛情のこもったごちそうを食べたいでしょ?」
「は、はい。」
 絵梨佳ににらまれて、彼は思わず肯定してしまった。
「わあ、うれしい!やっぱり女の子だもの。自分の料理を食べてもらえるのって最高よね!」
 絵梨佳がとびっきりの笑顔を浮かべる。その笑顔を見て彼は思った。これが自分の彼女で、この笑顔を浮かべながら手料理を作ってくれたなら。しかし、絵梨佳の笑みは悪魔の微笑みだということに、彼はすぐに気づかされた。
 目の前に落ちているスナック菓子を、絵梨佳はいきなり踏み潰す。クシャッ。という小さな音とともに、スナック菓子は絵梨佳の靴底へと消えた。
「うふふ。私の愛情がたっぷりこもっているごちそうよ。」
 そう言って、絵梨佳は足をどかす。スナック菓子は原型を留めずに粉々になり、表面は絵梨佳の靴底の汚れを残していた。
「私の作った最高のごちそう。食べてちょうだい!」
 しかし、彼女がなんと言おうと汚れた靴で踏んだだけである。とてもじゃないけど、彼は食べる気がしなかった。動かずにいる彼の顔面に絵梨佳の靴底がめり込む。
「私の作ったごちそうが食べられないって言うの?だったら、こびととして一生靴底で過ごすのね。」
 絵梨佳の蹴りが連続して顔面に炸裂する。たまりかねた彼が、「食べます。」と言うまで顔面への蹴りは続いた。
 これ以上痛い目に遭いたくない。その一心で彼は、絵梨佳に踏まれたスナック菓子の残骸に舌を伸ばした。口の中にはスナック菓子の味と、靴底の泥汚れによる苦い味が混在していた。
「ねえ、あたしのごちそう、最高においしいでしょ!」
 絵梨佳が笑みを浮かべる。
「あーあ、見てらんないよ。」
 晶子が呆れたようにつぶやく。晶子には、自分が踏んだものを「ごちそう」と言って食べさせる絵梨佳の感覚が理解できなかった。罰を与えているのだから、「餌」として有無を言わさず食べさせれば良いのに。というのが晶子の感覚だ。
「晶子も彩美もごちそうつくって食べさせなよ。」
 絵梨佳に言われて、2人は近くに落ちているスナック菓子を踏み潰し、その残りカスを男に食べさせた。最初は抵抗があった男も、2回目以降はすんなりと食べてくれた。

「ねえ、靴の裏にもごちそう残っているんだけど、残さず食べてよ。」
 絵梨佳が近くの椅子に座り、靴底を男に向ける。靴底の凸凹にはスナック菓子の粉がはさまっていた。
 男は最初難色を示したが、さんざん少女達に踏まれて床に残されたスナック菓子の残骸を食べた後なので、靴底についたお菓子の残骸も舌で舐めてきれいにしてくれた。
「ごちそうだけじゃなく、靴の裏全部を舐めてきれいにしてね。こびとになって靴底で一生過ごすのがいやならば。」
 言われるままに彼は、絵梨佳の靴底全てを舐めてきれいにした。どこを歩いて何を踏んだかわからない靴底である。靴底の汚れが苦いような刺激を舌に与えたが、それでも最後まで彼は靴底を舐め続けた。
 絵梨佳が終わると、次は晶子と彩美だ。靴底の汚れは3者3様。通常の神経ではとてもじゃないけどできないようなことだったが、追い詰められた彼は3人の少女たちの靴底を舐めてきれいにした。
「うふふ、ご苦労様。でも、まだまだ終わりじゃないよ。」
 絵梨佳の残酷な声が地下室に響いた。(つづく)

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