Clone.Hにおける骨密度および骨強度(物理的性状)に及ぼすEstorospecial(ES)の影響
Effects of  Estorospecial(ES) on bone density and bone physicochemical properties on Clone.H

    子      美      
       研究所     看護栄養学部分室

ABSTRACT
骨粗しょう症の予防を目的として、生育期のC.H骨粗しょう症モデルに対する骨量および骨強度を増強させる素材としてES(Estorospecial)を検討した。
ESを飲料水に混合して12ヶ月経口投与した結果、ES区は無投与(対照)区に比べ骨強度が増加した。

INTRODUCTION
骨粗しょう症は、骨組織における単位面積あたりの骨重量が生理的老化による骨量減少により著明に生じた病態であり、骨塩量と骨基質の比率が変化することなく骨量が減少し、骨の脆弱性が亢進する状態をいう。
つまり、骨に鬆が入ったようになり、腰背痛を生じたり、骨折しやすくなる現象である。
骨粗しょう症は高齢化に伴い、増加の一途を辿っており、本症をどのように予防および治療するのかは大きな課題である。
骨粗しょう症の発症に関する因子については多くの説があるが、未だ未解決の部分も多く、その原因は単一でないとされている。
加齢による因子(閉経によるエストロゲンの減少、腸管でのCa吸収能力の低下、運動量の減少や内分泌学的因子、ビタミンD代謝障害、さらには遺伝おおよび体質など多くの危険因子が多次元的に関与する。
また、老齢期を迎えるまでに蓄積された骨量も大きな因子である。
Estorospecial(ES)の骨強度を増加させる効果は、in vitorでのassay系において効果が示唆された(前報)が、in vivoにおいては検証されていない。
今回は、著者らは予防という観点から骨量の蓄積に対するESの効果について骨強度の観点から検討を行なった。

MATERIALS&METHODS
Materials:
HumanAnimal(HA社)から培養人間(Clone.H:Nomal系)168ヶ月齢:雄を購入した。
ESはOki et al.の方法に従って調製した後、

  試料を10000倍量の蒸留水に溶解させ、飲料水として供試し、自由飲水とした。
ESを水系に混合するときにモノ-グリセリン脂肪酸エステル製剤を100ppm使用した。(C=16)対照区には同じく蒸留水を飲料水として供した。
Methods:
購入したCHを1週間慣化飼育後、2群に分け、通常飲料水区=対照区50検体、ES混合飲料水区=ES区50検体とした。室温22℃±3℃、湿度55%±10%、明暗サイクル12時間(明期7:00〜19:00)の条件下で両区ともギプス固定し、骨粗しょう症モデルとして飼育した。
6ヵ月後、各区10検体は、全採血して血中ミネラルを測定した。
骨髄中の細胞については、右大腿骨から定法に従って骨髄を採取し、塗抹標本を作製して鏡検した。
左大腿骨は、物理破断試験に供試した。
物理破断試験はYD社のRS2001型、2mm径の円柱プランジャー、0.5mm/sで行なった。
骨密度は微細DEXA法にて測定した。
全圧縮試験については、予備試験でStomp感度の高かった20名の女性(18歳〜23歳)をパネルとして、踏みつけ圧縮時の感触を官能的に評価した。
踏みつけは、サイズ24.0p〜25.0cm、ヒール高6〜13p、ヒール底面1.5p×1.5p〜5.0p×5.0p相当、筒の高さ31p〜40p、の黒もしくは茶、ベージュ系(天然皮および合成皮革)のロングブーツを用い、ヒール部を使わず、親指の付け根の部分を中心に行なった。
その他、踏み方は自由踏み付けとし、制約しなかった。
官能評価は3点識別による判別と、踏んだときの固さと踏んでから潰れるまでの固さおよび総合的な固さについて評価した。
今回の女性パネルの体重は46kg〜55kgであった。
解析はSASsystemを使用した。

RESULTS&DISCUSSION
試験期間中斃死した検体や何らかの疾病を発病をした検体は見られなかった。








 






両区とも4週間ほどで筋肉の萎縮が観察された。
また、飲水量と摂食量については両区の間で顕著な差は無かった(表1)。

表1 飼育期間中の1日あたりの飲水量と摂食量

試験期間中の両区の間に成長の著しい違いは見られ
なかった。
試験開始時と終了時の体長と身長を表2に示す。

表2 174ヶ月齢と180ヶ月齢における体長および体重

血中ミネラル濃度:
血中ミネラル濃度のついては表3に示す。

表3 180ヶ月齢C.Hの血中ミネラル濃度(mg/100g)

表3に示すとおり、対照区、ES区の血中Ca濃度とMg,Pは正常値の範囲内であった。
CaはES区がやや高い値を示した。
骨密度:
骨密度の測定結果を表4に示す。

表4 180ヶ月齢C.Hの骨密度

(p<0.01)
表に示すとおり、ES区は有意に骨密度が高かった。
(P<0.01)
対照区は明らかな骨粗しょう症領域の骨密度を示したのに対し、ES区は標準よりも骨密度は低いものの、骨粗しょう症にはいたっておらず、骨粗しょう症予防効果が見られた。

骨髄像:
骨髄像を観察して結果、両試験区とも好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、形質細胞、骨髄巨核球、赤骨芽系とも正常値の範囲であった(データは示さない)。

  物理試験結果:
結果を図1に示す。


図1に示すとおり、ES区は有意(p<0.05)に破断応力が高かった。
このことは、破断に対しES区の大腿骨が強固であることを示すものと考えた。
鏡検の結果も対照区よりもES区の方が緻密な構造を示しており、小孔も少なく中心管も小さくて正常であった(写真は次報掲載予定)、組織学的にもESの大腿骨への骨構造の強化への関与が示唆された。

官能評価:
官能評価については、踏んだときの固さを3点識別法で判別し、さらに固いほうの群を選択してもらった。
その結果、20名中17名が正解であり、有意(p<0.01)
に識別された。
踏んだ瞬間の固さ自身の評価は7段階評価で
8点:かなり固い
7点:やや固い
6点:わずかに固い
5点:どちらでもない
4点:わずかに柔らかい
3点:やや柔らかい
2点:かなり柔らかい
とした。
また、踏んでから潰れるまでの固さと、総合的な固さ評価も同様に7段階で評価した。
結果を図2、図3、図4に示す。









 








図に示すとおり、踏み始めの固さ、潰れるまでの固さ、総合的な固さとも有意(p<0.01)にES区が固
いと評価され、物理試験結果および骨密度と一致した。
相関係数を表5に示す

表5 骨密度と破断強度および官能評点の相関係数


特に骨密度と個々の検体の官能評点の相関係数は0.912〜0.961で、非常に高い相関を示した。
その他、官能評価における女性パネルのコメントには「踏み始めの固さがぜんぜん違う」:7名、「対照区はすぐに潰れたという感じだったが、ES区は少し持ちこたえてから潰れる感じだった」:3名、「対照区は踏む感触が弱く感じた」「グロかった」「意外と潰れにくかった」:各2名、「ES区の小人はがんばったって感じだった。それに比べると対照区はあっけなく死んじゃった」、「潰れたと感触というより、踏み始めてから声を長く出してたほうがES区だったから、丈夫なんだということが判った。」、「今死んだなって感じてから、本格的に潰れていくときも対照区のほうが感触が弱かった」、「ES区のほうが血が飛び出る量が多かった気がした」、「ES区のほうが最期に潰れるときの音が大きかった」、「小人の体格が違った気がする」、「ES区のほうが踏むほ
  うとしては楽しめた」、「対照区よりもES区の方がゴリゴリした感じだった」、「踵で踏みたかった」、「思ったよりブーツが汚れなかった」各1名などのコメントが上げられた。(複数回答あり)
また、踏んだときのコメントとは別に、今回の検体の状態については、「踏む際に検体が性的興奮を示した」という趣旨のコメントを述べたパネルが20名中11名に及んだ。
今回使用した検体が、月齢が180ヶ月齢と、性成熟が完了した直後の月齢だったという事と、評価の際に異性に初めて接触したことを考慮すると、充分考えられることである。
同様の現象はこれまでも幾つか報告されており、それらの報告と一致した。
潰し終わった検体は、外見的には使用したブーツのトレッドパターンによって相違があるものの、両区間の最終的な潰れ度(破壊状況:検体の厚さなど)については大きな差は無かった(次報で詳細を報告)。
しかし、潰れる過程は両区の間に差が見られ、明らかにパネルはES区が固いと評価し、物理的試験結果、骨密度とも一致することから、ESは骨強度の増加、特に骨折などの外的衝撃に対してて効果があると考える。
しかし、その効果が実際どのようなメカニズムで生じているのかは検証する必要があり、次報(骨組織の鏡検結果の詳細等)で報告する。
今回の結果では、ES区の血中ミネラル濃度が高かかったことから、腸管からのCaの吸収が促進された可能性がある示唆された。
また、今回の試験ではESは特に味などについても検体から忌諱反応もなく、概して摂取しやすいといえた。
以上の点から、特に発育期間中のESの投与は骨粗しょう症の予防に有効な素材である可能性が見出せたといえる。
疑問点としては、体重、体長の等の発育に殆ど差が無いにもかかわらず、これほど顕著に骨強度に差が出たことで、パネルのコメントでも指摘があったが、検体間に骨組織の他にも、脂肪率、筋肉などのついも差異が見られると推測する。
さらにESの副作用などについては、従来の
Estorogenでは発癌性が指摘されたが、今回ESの投与においては剖検した検体中に癌を発症した個体は無かった。
今後は特に副作用に着目し、検証試験を実施していきたい。

参考文献
1.大木奈子(2000) 「小さくされた男たち」 澄香の話 Vol.8
2.大木奈子(2001) 「小さくされた男たち」 澄香の話 Vol.10








 







【徒然話】
この文章はNo042系ではなくNo051系文章の外伝です。
CH(クローン人間)についてはNo051等でも説明しましたが、実験動物(特に臨床試験用)として開発され、認知されたという設定です。
C.Hの「人格および人権」という倫理問題から免除されるために、等身大の人間の大きさではなく、1/10程度の体長に制限して明らかに「通常の人間と異なるもの」として創造されたものです(質量は約1/1000になります)。
この小人達は、実験動物にふさわしく、遺伝情報が精査され、実験には通常の系(Nomal系)から、特定の病気を自然発症する系も作り出されており、盛んに研究に使用されているという背景を持っております。

今回の文章は、No051他でC.Hを使用した研究を行なっていた女性研究者達の報文という設定です。この文章自体は雑誌(月刊誌レベル)に投稿するくらいのものを想定しております。
今回はvivoの試験を行なっておりますが、前報でvitroにおいてスクリーニングされた結果を今回はvivoで確かめたということにしてあります。
本来は本当の対照区(ギプス固定していないもの)を置き、ESの水準を振った試験を行うべきなのですが、手元に分散分析他をできる解析ソフトが無かったので(手計算でも良かったのですが・・面倒です)結局分散自体の検定と平均値間の差の検定になってしまいました。
(今回は無理やりExceを使いました F検定とT検定しか出来なかったです)というわけで、この文章の実験は、実験計画としてはヘナチョコで、リアリティーを損なっておるかもしれません。
ご容赦ください。

官能評価は、機械での評価に比べ検出能力が高い評価となっており、今後の試験でも小人の固さを測定するのに女性による踏み付けが機械よりも有効であることを示しております。
文章全体としては割と細かく設定したつもりですが、測定条件、データとも凝るとすぐに全体の破綻を来たすので、この程度にとどめました。
リアルさに拘る方には上記実験計画と共に不満足な内容かもしれません。
あと、根本的な問題として、骨粗しょう症について検討するのであれば通常は雌の個体(卵巣を摘出したモデル)を使用するのですが、自分的にはやはり女性に踏まれるのは雄でなくてはならないと思い、
 
一連の文章では若年骨再生モデルとして雄のC.Hを登場させています。(ちなみにEstorogenの投与は骨を強化しますが、子宮内膜に癌を発生させることもありますので日本では用いられておりません)