作品No018+N022+No023

作:eiさん

【いきなり大詰め】
彼は、こんなにあっけなく部下が全員倒されることなど考えてもいなかった。
彼女はうろたえる彼の正面に立ちふさがった。
「さ、どうする?」
彼女は勝ち誇って彼を見下ろした。
ヒューマノイド系ながら身長が120cm程しかない矮小な身体つきの彼は、彼女に圧倒された。

彼は、俗にいう「リトルグレイ」(注1)呼ばれるタイプである。
宇宙刑事である彼女は、身長が170cm、同じくヒューマノイド系の女性にしては平均的な体格だった。
それだけでもリトルグレイにとって充分大きかったが、彼女の履いているダークブラウンのロングブーツは、木目の厚底が爪先の部分でも8cmはあり、細めのヒールは15cm近くもある。
リトルグレイ達の身長は、彼女の腰まで達するかといったところで、圧倒されるのは無理もなかった。
彼女は地球人に紛れ、捜査活動を行なった。
もし、犯人グループがこの星に潜伏していた場合、こちらの存在を知られないために、人ごみに紛れるのが一番良いと考え、都市を選択した。
金色に近い色調の茶髪は彼女のオリジナルだが、濃い化粧をはじめとした外観は、この地域の地球人女性で、年齢層の女性を想定したものだ。
彼女は、かなりうまく地球人に溶け込んでいた。
彼女にとって、誤算だったのは、彼女があまりにも魅力的であるために、地球人男性からの接触を求める行為が多すぎることだったが・・・・・
一般に「リトルグレイ」と呼ばれるタイプには、比較的人間の感情に興味があるものがおり、彼等もその系統の種族だった。
この習性が長い年月を掛け、脳細胞の発達を促し、「人間の心を読む能力」いわゆるテレパシーに近い能力を彼等にもたらした。
彼等が長い年月と世代をかけて習得した能力が、宇宙刑事として潜伏している彼女を探知した。
しかし、彼女もまた人ごみに紛れながら、地球人とは異なる、彼等特有の波長の思念の断片を探知していた・・・そして彼等に接触する機会を待った。

さすがに当局も、犯人グループの潜伏可能性の低い星域にまで、多人数の捜査員を派遣する余裕はなく、地球を含めたこの星域に派遣されたのは彼女一人だった。
未捜査空間を埋め、消去法により犯人グループの潜伏空間を絞り込む為の捜査だった。
その点、犯人グループはうまく当局の裏をかく事に成功したといえる。
しかし、若い彼女は優秀だった。
この点が彼等にとって誤算になった。

リーダーである彼は、彼等の行動の邪魔になるであろう彼女を直ちに除去することを決定し、綿密な計画を立て、彼女をおびき寄せた。
しかし、戦闘が始まると、彼等が彼女をおびき寄せるために設定した空間は、そのまま彼等が脱出困難な窮地と化してしまった。

彼女が、彼等の誘いに乗って、空間に到着してから、ほんの僅かな時間で結着はついてしまった。
彼女は、いまや跪いている彼の顔に厚底ブーツの靴底を近づけ、見せつけている。
靴底は、彼の部下達の体液で濡れていた。
靴底に付着した体液は、薄暗い空間の中で、弱い光を反射している。
「あんたも、こうなりたい?」
彼にとって、サイズが25cmもある彼女の厚底ブーツは巨大で、十分な威圧効果を示した。
事実、先ほどの戦闘で、彼の部下達は、彼女の厚底ブーツを履いた足で、体の急所を踏み潰されるなどして絶命している。
無論、強烈な蹴りにより、一撃で生命維持に重要な器官を破壊された者もいる。
足元が比較的不安定になりがちな厚底ブーツも、彼女には全く支障にならなかった。
むしろ重いブーツを利用して、彼女は徹底的に踏みと蹴りに徹した攻撃を展開した。
彼は、彼女の戦闘能力と厚底ブーツの威力を目の当たりにし、ほとんど思考がとまった。
彼女は、彼により大きな組織拠点の所在地を話すように強要した。



【作戦概要】
彼等リトルグレイは、体格が貧弱なことから、元来テレパシーを使って綿密に連携したチームプレイによる攻撃に長けていた。
今回のケース場合、火力(武装)の勝負では、いわゆる正規軍に準ずる宇宙刑事の装備に敵わないことが明らかな為、火器が使えない閉鎖した空間を作り上げ、数と連携を頼みとした、いわゆる格闘戦で彼女を圧倒しようとした。
それに、武装を使った戦闘を実施していては、彼等の存在が暴露され、増援を送られる危険性がある。
船対船の戦いなど彼等にとっては、もってのほかである。
当局に探知され、本格的な掃討戦が始まれば、ギャングに毛の生えたような装備しか持たない彼等に勝ち目はなかった。
精々最期はこの星の住人を人質にとって、絶望的な篭城戦を行うしかない。
少数の地球人の犠牲者も出るだろうが、彼等が全滅することは確実だ。
彼等は、彼女が戦闘中に当局へ通報することを警戒し、一種の異次元的な空間に、火器の使えない狭い閉鎖空間を設定した。
彼女の体格はリトルグレイ達にくらべ確かに圧倒的だが、リーダーである彼は20名近い人数で戦闘すれば倒せると考えた。
この20名という数字は、空間制御のために残した一人を除く、彼の部下全員の人数だ。
決戦場を自らに有利なように設定し、そこに最大限の戦力を集中するという点では、彼はまさに原則を守った。

【前哨戦】
彼等の拠点自体も異次元的な空間に設けられていた。
この手の地下組織にとって、当局に探知されない為のポピュラーな手法といえた。
エネルギー的な反応もそうだが、思念とか生命反応とかいった反応も探知されることはないからだ。
その入り口は、ビルとビルの谷間の目立たないところに設けられた。
普段は、もちろんこの入り口は閉じられており、なんら痕跡がない。
それに対して、彼女をおびき寄せるために設けられた空間は入り口が開放されており、
彼女の手持ちの装備で容易に探知できた。
無論彼女は、これが罠であることを察知したが、地球人が紛れ込む可能性も高い。
さらに、大量の地球人が空間に紛れ込んだときも同様だ。
大量の地球人が消えれば当局も本腰を入れるので、そのような場所に入り口を設けることは彼らにとっても自殺行為となり、可能性は低いが・・・
いずれにしても早期の対処が必要だった。
しかし、直ちに罠に乗り込むにはいくつかの重大な危険があった。
何よりも、彼女がその空間に入ったとたん、彼らの手で永遠に封印されかねない。
彼らが空間を制御する手段を封じる必要があった。
彼女は、このことを報告したが、今時点で当局は本腰を入れる可能性はなかった。
彼女の他にも、多数の捜査員から同様に有力な報告が、各方面から届けられているからだ。
当面、彼女はこの事態に、自分で対処しなくてはならなかった。

彼女は、彼等の動きを待った。
しばらくすると、別の座標に僅かな空間の歪が確認できた。
そして、その歪は極めて短時間で消滅した。
しばしば、自然現象として、空間に歪が起こることがある。それは不定期で短時間に過ぎないが、人間が運悪くそのタイミングでその座標に重なると、今いた空間から消えたように見える。
いわゆる、彼等が「神かくし」と呼ばれる現象である。
行方不明となった固体は、二度と姿を現さないか、まったく時間座標もしくは空間座標が異なる地点に飛ばされることとなる。
彼女は、今回の歪が自然に起こるものではないことを、読み取った。
彼女は、過去同じ座標で数回以上、不定期かつ極めて短時間、このような現象が起きていることから、彼等が拠点へ出入りするときに生ずるものだと考えた。
彼女の手持ちの機器は、リトルグレイ達の予想以上の感度を持っていた。
彼らは、拠点との出入りの際には何ら不安を感じていなかった。
通常、感度を上げるとノイズも多くなる。
それでも、ノイズや他の自然現象から今回の現象を拾い上げることが出来たのは、長時間のモニタリングの賜物であった。
いわゆる「張り込み」である。
微細かつ不自然な変化を彼女は見逃さなかった。
彼女は、行動を起こした。



彼女の探知した地点に行き、彼等の拠点の痕跡を探した。
探知した場所は、ビルの谷間だった。
数メートル先は人通りの激しい通りだが、まず、このようなビルの谷間というより、隙間に近いところに注目する人間はいない。
おそらく、普通の人間はここを通ろうとしないだろう。
入り口としては、充分隠蔽されているといえた。
彼女は探知した地点の空間を歪ませ、脱出路を確保するために入り口を固定した。
彼女は空間の歪み入っていった。
側から見ると、彼女の体が「神かくし」のように、消えたように見えた。

彼女の思惑通り、そこは明らかに彼等の拠点であった。
通路や部屋のような空間が広がっていたが、しかし、思ったよりも規模が小さい・・・・
より大きな拠点があり、この拠点は、ほんの小さな休憩所のようなものか・・・
彼女は幾分落胆した。
彼女が奥へ歩いていくと、それほど大きくない部屋があり、一人のリトルグレイが機器と向かい合っている。
彼の行動から技術者らしいことがわかる。
彼の手元にあるのは空間制御ユニットだ。
それを見て彼女は安堵した。
機器がそろっているということは、小さいながらも彼らにとっては立派な拠点ということだろう。
あるいはこの規模の拠点しか作れなかったのか・・・・
彼女はすばやく思案したが、いずれにしてもユニットを奪うことには変わりがない。
彼の体は、貧弱なリトルグレイの中でも、さらに貧弱な部類に入り、戦闘に不向きな体格だった。

通常であれば、彼らの種族は、侵入者の侵入を察知できるだけの能力を持っているはずだったが、自分達の拠点にいるということが、彼から警戒心を無くし去っていった。
彼は全く彼女の侵入に気付かなかった。
彼女は、彼の操作する空間制御ユニットを奪うことに意識を集中しながら、彼を観察した。
ユニットを破壊するのではなく、奪うのは、彼等が設定した「罠」である空間の出口を、彼らの意のままにさせないだけでなく、自分で制御するためだ。
仮に、彼らの意のままに出口を閉鎖されれば、封印するだけでなく、彼女を残したまま、空間ごと破壊することも可能だからだ。

どうやら、拠点に残っているのが、彼一人であることを確認した彼女が、襲撃行動を起こそうとしたとき、
彼女の背後の方から、数名の若い女性の大きな話し声と、重い靴音が響いてきた。
次の瞬間、彼女は自分の確保した入り口から、少女達が紛れ込んだ事を知った。
このような僅かな時間、しかも誰も来ないようなビルの谷間に入り口を確保しただけで迷い込んでくる個体あるとは彼女にとって不運としか言いようのない誤算であった。
彼に見つかるのを警戒した彼女は、少女達を追い返すことよりも、思わず身を潜め、成り行きを見守った。

「なんだよ、ここ」
「どうなってんだー?」
「ったく!」
「もう間に合わないじゃん!」
少女たちは、非常に急いで様子だった。
おそらく、近道する為にビルの間を通り抜けようとしたと思われる。
その為に空間の歪みに入り込んだわけだ。
少女達は、走りながら気付いたら周囲の状況が変化しているという、突然の事態の変化に戸惑いながらも、不当な状況の変化に相当苛立っている。
彼は不意の来客に気付き、身をこわばらせた。
彼の脳に、何者かの侵入に対する不安が生じた。
「よりによって、一人のときに・・・」
彼は不安にかられたが、警戒しながら部屋の入り口に行くと、見事に3人の少女たちに鉢合わせた。

3人の少女が彼を見下ろした。
2人はほとんど黄色というか金髪に近い茶髪で、そのうちの一人は、生え際から本来の毛の色が幾分見える。
もう一人の少女は同じ茶髪でもオレンジブラウン系だ。
3人とも濃い化粧をしている点は共通で、金髪系の2人は色違いでデザインの同じ厚底ブーツは履いていた。
厚底の部分に鋲が打っているもので、爪先部分も相当厚いが、太目のヒールも15cmはある。
また、鋲の部分より下は厚底の木目がのぞいている。
2人ともショートパンツで、それぞれピンクのフードつきのコート、チェックのコートが露出部分をややカバーしている。
オレンジブラウン系の少女は、スタンダードな黒い皮製のロングブーツを履いていた。
土踏まずの部分は形の良いアーチを描き、細めのヒールへと続いている。
ヒールはそう高くない。
筒口は少女の足に対して、ややゆったりしていた。
フェイクレザーのジャケットの下端からミニスカートが少し見える感じだ。
おそらく2人と同じ年齢であろうが、ギャル姉といった感じで、1〜2歳年上に見える。
少女達は、彼を見ると
「なんだこいつ」
「小人かよー」
「ここどこだよ、ムカつくー」
「おまえが、何かしたのか!」
戸惑う彼に対し一方的に「口撃?」する。
彼は驚きのあまり、満足に対応できずヨタヨタした。
彼には、二人の少女が履いている厚底ブーツの、鋲を打ったゴツい靴底が、何か非常に禍々しいものに感じ、その禍々しさが、彼のこれからの運命を暗示するかのような予感がした。
「こいつ、ホントに生きてんのかー」
「ふざけんなよ、こっちは急いでんのによー」
「聞いてんのかよー」
「おまえに言ってんだよ!おまえに」
「口ついてんだろ!」
「何とか言えよ」
一番手前にいた少女が、彼女の腰上ぐらいの身長にしか達しない彼の顔を小突いた。
彼はよろけて尻餅をついた。
「こいつ、どっかで操られてんじゃないの?」
彼のぎこちない動作に、少女の一人が笑いながらそう言うと、
「人形かよ?よく出来てんじゃん!」
「ムカつくから、コイツ壊そうか」

彼を小突いた少女が黒の厚底ブーツで彼を踏み押さえると、ベージュの厚底ブーツを履いた少女がいきなり彼を蹴りつけた。
彼は、苦しさで体を折り曲げた。
さらに、もう一人のオレンジブラウンの少女が彼の顔を蹴った。
少女達の歓声があがる。
「こいつ、人形のくせにけっこう丈夫じゃん」
「まだ、イケる?」
最初の数発は、なんとなく手加減していた彼女達だったが、テンションが上がり、全く手加減なしで、思うままに蹴り始めた。
彼に全体重を掛けて乗ったり、蹴りを入れる。
彼は抵抗しようとしたが、貧弱な体格な為、先制攻撃を受けると耐久力がない。
それに、少女達の重い蹴りは、彼にとって、充分行動を止めてしまう打撃力を持っていた。
彼が反撃の行動に移れなかったことが、ますます少女達を増長させた。
彼女はその様子を見ていて、少女達を助ける為に自分が出て行く必要が、全くないことを確信した。
3人の、黒とベージュのブーツが代わる代わる、あるいは同時に、彼の体に打ち込まれた続けた。
少女達は、大声で笑いながら彼を痛めつける。
十分も経たず、彼はボロキレのようになった。
彼の左手が変な角度に曲がって、彼は気を失ったが、少女達は一向に気にしなかった。

「やっぱ、コイツやべーよ」。
彼がぐったりしているのを見て、少女の一人がそう言うと、ようやく少女達の攻撃がやんだ。
「コイツ、口から汁出してるしー」
「ブーツ、汚れなかったかな?」
一人が気にすると、他の2人も自分のブーツを確認する。
彼の体には、彼女達のブーツから付着した汚れと、太目やら細目やらのヒールの跡が無数についている。よく見ると、トレッドのパターンすら判るものもあった。
「こいつ、どうする?」
「持ってかえって、飼う?アイボみたいじゃん」
「やだよ、キモいもん」
「こんなの放っといて、そろそろ、戻ろうよ。来た道そのまま帰れば出れるかも?」
「あ、電波とどかないじゃん、ココ。サイテー」
「ったく、ムカつくなー」
「コイツのせいでよー!」
「ウザイんだよ!」
少女達は口々に彼を罵りながら、最後に倒れている彼を一蹴りし、彼のことはもう忘れたかのように終始笑い声を交え、会話しながら元の道を帰っていった。

彼女は少女達が視界から消えるのを待って、姿を現した。
彼女は難なく空間制御ユニットを手に入れた。
今度は、彼らが「袋のねずみ」になる可能性が高くなった。

彼女は、部屋を出る前に彼の状態を確認した。
わずか10分足らずでぼろきれのようになった彼は、グッタリし、手は折れるなど、確かにダメージは大きかったが、命には、なんとか別状はない。
しばらくすれば(数週間以上か?)回復する程度のダメージである。
彼は、彼女の気配に気付き、目を開けたが、さすがにすぐには起き上がれなかった。
彼は、不安と恐怖と共に彼女を見上げた。
そのとき、すでに彼女の動作は始まっていた。
彼は、彼女が足を上げ、そして踏みおろすところを、吸い込まれるように見入った。
凄まじい衝撃が彼を襲った。
彼女が踏みつけた瞬間、彼女のブーツを支点に、彼の足と頭が一瞬浮くほどの衝撃だった。

少女たちの攻撃と異なり、本格的な戦闘訓練を受けた彼女の肉体は、凶器だった。
一撃で複数の骨が同時に折れる鈍い音がして、彼の胸郭はあっさり踏み破られた。
一撃で、致命的なダメージを与えたのは確かだったが、彼女はさらに二度踏みつけた。
彼女の足は、貧弱な彼の体にめり込み、彼の内容物がブーツを汚した。
二発目は文字通り、トドメの一撃だったが、最後の一撃は、運が悪かったとはいえ、少女達を迷い込ませた自分の迂闊さに対する苛立ちでもあった。

彼の意思とは関係なく、彼の体は微かに痙攣している。
彼女は、ここにくる途中で手に入れたポケットティッシュで、木目の厚底部分についた彼の内容物を拭き取った。
1コのほとんどを使って彼の痕跡を消すと、彼女によって踏み抜かれ、砕かれた骨が露出している「胸の穴」に丸めて捨てた。
捨てられたティッシュは、まだ流出しつづける彼の体液で、すぐに染まりきった。
彼は微かな「死の痙攣」を彼女の足元で終えようとしていた。


彼女は、拠点から出ると、入り口を閉じた。
そして、彼らから得たユニットで彼等の待つ空間への入り口を設定した。
リトルグレイ達にとって、自分達が設定した入り口からではなく、不意を付いた位置から彼女が現れたことになる。
薄暗い空間にはすでに先客がいた。
彼女の数メートル前の床には、紛れ込んだ不運な中年の男性が、遺体になって無造作に転がっていた。
彼等と交渉しようとしたのか、「紙幣」が数枚、辺りに落ちている。
空間の隅を見ると、いずれも若いと思われる男性の遺体が少なくとも2体は転がっている。
彼女は、これ以上の混入者を防ぐために、彼らから奪ったユニットで、2つの入り口を閉鎖した。

彼等は、すでに自分達の拠点を潰されたことを知った。


【罠の中での戦い】
彼女がその空間に現れると、彼等は半円形に彼女を取り囲んだ。
いずれも若い個体で、自分達の理想に燃えていた。
目の前に現れた彼女に対し、当局に対する反感や憎しみを、そのまま向けていた。
しかし、その闘争心はすぐに油断に変わった。
30畳もない薄暗い空間で、これだけの人数を収容するにはやや手狭な感じすらした。
彼らの手にはいずれもスパイク(先のとがった金属棒:アイスピックの先のようなもの)が握られている。
彼等のような非力なものが、相手の急所に力を集中させるには、理想的な武器だ。
暗殺者の武器としては定番であるが、この極めて原始的な武器を使用することに対し、彼等は抵抗を感じた。
しかし、火器が使えないことと、狭い空間で大きな武器を振り回せないこと、自分達が非力なことを考慮すると、最善の武器と納得した。
使いこなすには至っていないが、数名の地球人相手に練習はできた。
スパイクの有効性については、この空間に紛れ込んだ地球人の遺体がすでに証明している。
彼等のリーダーは、その点で極めて柔軟な頭脳の持ち主と言えた。
狭い空間で、数の多い彼らが武器を持って彼女を取り囲んでいる光景は、彼等に自分達の戦力の方が圧倒的優位にたっていると確信させた。
この時点で彼等は、彼女を倒すことは、もはや本来の任務の片手間ぐらいにしか考えていなかった。
空間からの脱出は、彼女を始末してからユニットを奪えば何ら問題がない。
彼等にとって、彼女を倒した後、事故に見せかける算段の方がむしろ重大に思えた。
やり方がまずいと、かえって当局の捜査が強化される可能性があるからだ。

彼女を含め、地球人タイプのヒューマノイド系宇宙人の体格は、貧弱な体格の彼等にとって羨望の的であり、特に女性には非常に強い性的な魅力を感じていた。
彼等が地球に潜伏してから、地球の女性に対し、終始その魅力に取り付かれないことはなかったが、彼等には「やるべきことがある」というその一点で、魅力を振り切ってテロ拠点の整備という任務をこなしてきた。
具体的には、仲間の安全な収容場所と休養場所の確保、そして繁殖活動のための調査である。
各方面で活躍した彼等の「戦士」達は、この場所で休養をとり、新たな戦いに挑んでいく・・・
そして、衰退した彼等の種族もここで徐々に数を増やし、種族としての力をも取り戻す計画だった。
そのため、基地整備後に、種の繁栄のための地球人の「女性狩り」も計画していたほど、地球人タイプの体を求めていたのだ。(注2)
彼女の若く健康的な肉体は、地球人にとっても1級の女性であろうことは、疑いの余地がなかった。

彼女は、彼等が自分を侮っていることを感じた。
しかし、彼女は、目の前を取り囲む貧弱な体格のリトルグレイ達に全く脅威を感じなかった。
170cmの彼女が、厚底のブーツを履くと180cmをゆうに超える身長になっている。
それに比べ、グレイリトル達は、彼女の腰にも届かない身長でしかない。
数はともかく、ビジュアル的には彼等はそれほど脅威には見えなかった。
彼女は彼等を見下ろしながら、
「最後のチャンスをあげるわ。大人しく投降したら命は助けてあげるわ。と、言いたいとこだけど、あんた達にはもう死刑判決が下ってるの。悪く思わないでね。」
と言うなり、
彼女は一番手前にいた部下に、強烈で濃厚な愛撫の念を送り込んだ。
彼女の精神的な能力は、リトルグレイのように種族特有の能力というよりも、本人自体の素質を見い出され、訓練により徹底的に高められたものだった。
彼女は、刑事としての経験は少なかったが、身体的な能力や知力を含む精神的なレベルは宇宙刑事の中でも1級であった。
性格が奔放すぎる点は、当局の一部には問題視する声もあったが・・・・

彼等の性行為は、テレパシーの発達に見られるように、精神的なものに依存する点が多い。
また、愛撫も手・足などに対するものにはほとんど反応しないが、性器やその周辺などに対しては著しく弱い。
また、精神的な満足感のみでも絶頂に達する能力を持っている。
それはある意味でSEXの究極の楽しみ方の一つといえたが・・・・時に破滅を招いた。

彼女の精神制御は優れていた。
一方、彼等はテレパシーで連携を取るほどの種族でありながら、彼女によって逆に簡単にかく乱されてしまった。
古来、勝ち戦にありながら、油断のために敗れ去った軍は、枚挙に暇がない。

彼等が彼女の次の行動と読もうと、彼女の頭の中を探っていたところに、彼女の思念が入ってきた。
敵対し、憎悪している相手から、このような思念が送られたことに意表を突かれた。
このことにより、自分自身を保とうとする、彼の精神的な防御ラインの一角が崩れた。
その彼の思念の隙に雪崩込むかのように、彼の脳に直接、彼女が濃密に熱く彼を愛撫する場面の視覚的情報、彼女の感触・ぬくもりが大量かつリアルに送り込まれてくる。
一瞬で彼の脳の処理応力を超えた。
濃厚な愛撫の思念を送られた部下は、ほとんど固まった。
彼は、ほとんど自分が直接彼女と接している感覚に陥っていた。
全身が溶けるような感覚だった。
それは、彼がこれまで体験した感覚とは明らかに次元が異なるものであった。
彼女の思念をまともに受け、彼の脳の中で何かがはじけた。
彼が脳内への刺激だけで、肉体的にもほとんど絶頂に達しそうになった瞬間、彼女は跳躍し、動きが固まっている彼の胸に強烈な蹴りを放った。
彼は、痛みよりも強烈な衝撃を感じて、無様にひっくり返った。
彼女は容赦しなかった。
ひっくり返った彼に対して、胸を腹側から突き上げるように踏みつけた。
特に踵を使った踏み付けではなかったが、元来動物の体は正面からの攻撃に対応するようにできている。
肋骨がわずかに下向きに空間を空けるように背骨から伸びているのは、その名残で、たとえば刃物などの上からの斬りつけなどには効果的に内臓を保護するが、下から刺されると非常に脆い。
同じヒューマノイド系として「リトルグレイ」に対しても、彼女は反射的にその角度から踏みつけた。訓練の賜物である。
しかし、この場合、踏みつける角度はほとんど関係なかった。
彼女のブーツの破壊力があまりにも圧倒的だったからだ。
彼の貧弱な肋骨は踏み折られ、彼女の足首までめり込んだ。
強い衝撃と共に胸下を圧迫され、彼の小さな口から青い血液と、透明な体液と共に(注3)、管状の器官がはみ出た。
管状の器官の、僅かに膨らみが大きい部分は、彼等の貧弱な胃である。
彼は、思わずめり込んだ彼女の足を両手でつかんで硬直したが、すでに彼の運命は決まった後で、単に断末魔の行動に過ぎなかった。
このような一連の攻撃を加えている間も、彼に対する彼女の集中力は途切れていなかった。
彼は踏みつけの瞬間に、脳が処理しきれなくなった快感によって、肉体的にも果てていた。
彼は、痛みとか苦しさよりも、ひたすら強い衝撃を感じた。
凄まじい快感の途中に、衝撃を受けて、体の中に彼女の足がめり込み、自分にとって非常に重要な何かが靴底で破壊され・・・思念が薄れていく・・・といった感覚しかなかった。
思念が薄れていく間も、脳内の快感と、手に感じるブーツの感触だけが鮮やかだった。
大量の射精による下腹部への生暖かい感触を感じ始める頃には、彼の感覚は急速に消滅しつつあった。
大量に放出された液は、地球人のものとは異なるが、同じ蛋白質系の臭気を放った。

「ほんと、テキストどおり・・・」
彼女は、右足のブーツの下で死の痙攣が始まっている個体を見下ろし、つぶやいた。
彼の股間の生殖器だけが、体の痙攣とは別に違うリズムで未だに痙攣しているのが、彼等の皮膚に密着した機能的な服の上からはっきり確認できた。
それは奇妙な光景だったが、彼女にとっては既定の事実だった。
彼女の精神制御は完璧と言えた。

彼等にとっては、仲間が死んだと共に、恐ろしく強烈で濃厚な性交が目の前で行われたに等しかった。
彼女と殺された仲間の間に交わされた思念のやりとりと、死の直前の彼の快感と衝撃の意識はそのまま彼等の脳に伝わったためだ。
チームプレイを高度にする彼等のテレパシーによる連携は、彼女に逆に利用された。
彼等はその場で立ちつくし、最初の犠牲者が殺されている間、誰も彼女を制止できなかった。
彼等の機能的だが皮膚に密着した被服のせいで、若い彼等の、植物の茎のような形態の不恰好な雄性生殖器が、最大限に伸びきっている様子が外からはっきりわかる。
彼女はそれを一瞥し、一瞬蔑むような表情を見せた。

元来、戦闘での損害というのは、互いに死力を尽くして戦っているときよりも、均衡が崩れてから、あるいは崩れたと感じてからの方が圧倒的に多い。
当然、崩れた側は、本来の実力以上に脆くなる・・・・
彼等のリーダーは、連携プレイにより全力を尽くせば、彼女を倒せると考えていたが、もはやその状況ではなかった。
まだ一人しか倒されていないにもかかわらず、彼等の得意な連携攻撃を完全に逆手に取られたことで、彼等の誰もが完全に「負けた」と感じた。
正しく、彼女の最初の一撃により力の均衡が崩れた。
その後の戦闘は、彼女にとって戦闘というよりも「屠殺作業」になった。

2人目の犠牲者は、同じく蹴りを受け、仰向けに倒れた直後に、彼女のブーツの土踏まずの部分で、細い首を踏み抑えられた。
長く細めのヒールと厚底の間に首を挟まれながら、彼女を見上げた彼は、首を踏みつけているブーツが柱のように高く伸びているよう錯覚した。
そのブーツの上端から、さらにはるか高い位置から見下ろす彼女の顔が見えた。
彼女の髪の色、目と形の良い唇が彼にとっては特に印象的だった。
彼女と目が合った。
彼女の思念が、彼の脳に入り込んでくる。
甘く、熱い彼女の念に、彼もまた、ほとんど溶けそうな感覚に陥った。
彼女の口元に笑いが浮かんだの彼が見た次の瞬間に、彼女の足に力が込められ、ギロチンのように首を踏み折られて絶命した。
ブーツに添えられていた彼の両手は、彼女の「トドメの一撃」を阻止することに、なんら貢献しなかった。

彼女は首を潰したリトルグレイの死を靴底を通して察知すると、首を踏んでいた右足を持ち上げ、その横で呆然と立ち尽くしている次の犠牲者の股間にブーツの爪先を押し当てた。
そして、彼女は口元に笑みを浮かべたまま、次の犠牲者の、くっきりと浮かび上がり服の上から確認できる茎を、ブーツの爪先でなぞった。
それで、彼にとっては充分だった。
彼はビクンと体を震わした後、小刻みに体を震わせ、彼女のブーツにすがりつくようにして跪いた。
彼の茎が放出した液による、新たな臭気が空間に満ちた。
彼の童貞は、彼女の厚底ブーツでの一撫でによって奪われた。
彼女は、既定の行動のように、右足をすがりつく彼の両手から引き抜くと、左手を彼の頭に添え、そのまま彼の頭の上を跨ぎこしながらターンし、彼の後頭部にまたがるような姿勢になった。
跪いている彼の頭を左手で押さえつけながら、ふくらはぎの高さで彼の首を両足で挟んだ。
彼女は少し両足に力を入れ、頭の固定具合を確認した。
彼の首を挟んでいるブーツの両足の爪先・・・皮特有の光沢と、おそらく今の戦闘中についたものも含まれる爪先についた小さないくつかのキズ・・・特に右足は、たった今彼の童貞を奪ったブーツの爪先である・・・これが彼の視野に映った最後の物体になった。
彼女は、彼の首を両足に挟んだまま、膝をひねりこんだ。


4人目は、彼女に股間を蹴り上げられ、宙に浮くほどの衝撃を受け、戦闘不能になった。
その次の瞬間には、なんとか自分を取り直した一人のリトルグレイが横から襲ってきた。
リトルグレイが、精神的衝撃から完全に立ち直っていないことを差し引いても、彼の攻撃は彼女にとってあまりにも緩慢だった。
戦闘レベルの全く異なる相手に対し、彼女は、余裕をもって廻し蹴りで対処した。
正確で鋭い廻し蹴りが5人目の部下の側頭部にヒットし、彼は横に吹っ飛んだ。
その隙に彼女は股間を蹴り上げられ、うずくまって戦闘不能になっていた4人目の男の腹にトドメの蹴りを連続して数発入れた。
最初の蹴りで、決して頑丈でない体格のリトルグレイの腹に彼女の爪先が厚底部分ごとめり込み、明らかに数箇所以上骨格が破壊され、内臓が破裂した。
そして、その後に続く彼女の蹴りの衝撃で、彼の内臓の破壊が一層進むと共に、破壊された臓器は衝撃でシェイクされた。
彼は彼女の足元で痙攣する存在に過ぎなくなった。
横に吹っ飛んだ5人目の部下は、意識が朦朧となりながらも立ち上がろうとしたが、上体を起こしたところで、彼女の厚底ブーツが彼の胸を襲った。
彼女は、起きかけた彼の体を踏み倒した。
やや細めで15cm近くもあるヒールがほぼ根元まで彼の胸の刺さり、彼はのた打ち回った。
ヒールを使った攻撃は、力が一点に集中する為、とてつもない破壊力がある。
しかし、相手の生命を奪うほどの力を込める場合、正しい角度で目標を踏みつけないと、ヒール自体が破損する可能性が高い。
その点、彼女は特に意識することなく、ごく自然に、最も正しい角度で踏みつけた。
彼女のヒールは、ほとんど抵抗を感じずに、彼の胸に打ち込まれた。
生卵の底を潰して机に立てたのと同じような原理で、彼女の足元は、変形した彼の胸部の為に意外と安定していた。
足元の安定を確認すると、彼女は右足のヒールを彼の胸に刺したまま、もう一方の足を彼の顔に乗せ、踵に体重を掛けた。
顔に乗せた足に2度、3度と勢いを付け体重を掛けると、もう一方のヒールも彼の顔面を突き破った。
ヒールは根元近くまで貫入し、ヒールの脇から体液が溢れ出た。
そして彼は動かなくなった。
彼女は、彼の死を確かめると、ようやく彼の体からヒールを抜いた。
両方のヒールが体液で濡れ、薄暗い空間の中で弱い光を反射して光沢を放っていた。

彼等の「快感による歓び」と「断末魔の悲鳴」の思念は、彼女の頭の中に直接届いた。
彼女は、それらが重なり合って頭の中に届き、やがて思ったとおりのタイミングで、消滅するのを楽しんだ。
そのたびにリトルグレイは、彼女の厚底ブーツの犠牲になっていった。
彼女を取り巻いている彼等に、もはや当初の理想に燃えた心意気や、彼女や当局に対する憎悪や攻撃心はなかった。
彼等はただ、彼女に「構ってもらえる」順番を待った。
順番を待つ彼等の思念にあるものは、彼女に構ってもらう際の動揺と不安、そして何よりも彼女の甘く、濃密な攻撃に対する期待だった。
彼等は逃げることすら考えつかなかった。

空間には、破壊された彼等の体から流れた体液などによる生臭い臭いが満ちていった。

ゴリッ!!
最後の部下の頭が彼女に踏み砕かれ、彼の脳の周囲を満たしている液が流れ出た。
彼女は最期の部下の死を見届けると、床に転がっているリトルグレイ達の間を歩き回り、まだ痙攣しているいくつかの個体の急所を踏みつけた。
さらに何人かのリトルグレイの微かな生命反応が、彼女の靴底の下で消えた。




そして、リーダーである彼だけが残った。

「あー、すっきりしたー。」
彼女はせいせいした表情で言った。
「なんて、奴だ・・・・」
彼女は頭の中に直接話し掛けてくる声に答えた。
「溜まってんのは、あんた達だけじゃないんだよ。
あたしだって、地球のイイ男GETしたいんだけど、勤務中に勝手に現地の個体を採取できないしー、まぁ、一応刑事も公職だからしょーがないんだけど、おかげで超欲求って感じ。
おまけにあんた等の相手してやったんだから、少しはストレス解消させてもらっても罰は当たらないでしょ」
彼は絶句した。
「それに、あんたの手下達も気持ちよくさせてやったんだから、感謝して欲しいくらいだね。ま、全部シメちゃったけど」
彼女は屈託なく笑った。
「おまえ、タダの刑事じゃないな。何者だ」
「あ、言っとくけど、あたし、こないだちゃんと処刑のライセンス取ったから、違法じゃないからね。あんたの手下をシメるとこ見てて、プロだって判ったでしょ?」
そう言うと彼女は、彼の目の前の空間に、特有の記号文字で書かれたライセンスの映像を映し出して示した。
「だから、これからあんたをシメるのも合法行為よ。」
「それにしてもあんた達、ホント、テキストどおりの反応ね。これじゃ、何やってもうまくいかないんじゃない?やっぱあんたら、典型的な「落ち目」って感じだよ。まぁ、だからテロとか海賊ぐらいしかできないんだろうけどね・・・ま、あたしには関係ないけど」
「・・・・・・」
「それにしても、あんたの手下、超楽勝。
なんか、みんな、ソッコーって感じでイッちゃてたしー。
やっぱ、あたしとはキャリアっていうかレベルが全然違うね。
あんたら、真面目に犯罪しすぎだよ。(笑)」
彼女は、自分が「処刑」した男達の最期の思念を思い出して、笑いながら言い放った。
彼は、予想外の答えにうろたえ、思念を閉ざした。

「さてと、あたしがあんたから何を知りたいか解るよね?あんたの出方によっては、あたしも処理方法を考えてあげてもいいけど」
彼女は急に戦闘中の表情に戻った。

そして、彼女はうろたえる彼の正面に立ちふさがり、
「さ、どうする?」
彼女は勝ち誇って彼を見下ろした。
ヒューマノイド系ながら身長が120cm程しかない矮小な身体つきの彼は、彼女に圧倒された。
彼女は、いまや跪いている彼の顔に厚底ブーツの靴底を近づけ、見せつけている。
靴底は、彼の部下達の体液で濡れていた。
靴底に付着した体液は、薄暗い空間の中で、弱い光を反射している。
「あんたも、こうなりたい?」
彼にとって、サイズが25cmもある彼女の厚底ブーツは巨大で、十分な威圧効果を示した。
このときすでに彼女は、白状させた後の「彼の始末」方法を考えはじめていた。
しかし、思念を閉ざした彼には、彼女の考えは読めなかった・・・・・
この時点で彼は彼女の言う「処理方法」に助命という選択肢があるものと思っていた。





注1=「グレイ」とも呼ばれ、もっともポピュラーな宇宙人とされています。ヒューマノイド系の宇宙人であることと、身長が110〜130cm程度であること、体格が貧弱で、頭が大きいなどの特徴があり、目撃例も多く、実在するとまで言われています。
しかし、指が6本説、4本説、水かきがある説など、なにぶん宇宙人なのではっきりしたことは判っておりません。
「マッシュルームが好き!」という説(誰が調べたんだ?!)もあるほどです。
彼等の特徴を示す様々な説の中には、人間の心を読み互いにテレパシーで会話するというものや、性器周辺の愛撫に極端に弱いといったものもあり、この話の中では、それらの説を採用し、話を進める上で重要視しました。
また、彼等の性感覚についても諸説の中から作者にとって都合の良いものを選び出し、採用しております。
無論、その他の特徴も、この話の中ではある程度勝手に都合の良い設定になっております。
リトルグレイファンの方には申し訳ないです。
ちなみに、彼等が作る空間を含め、この話に出てくる空間の考え方は「ドラえもん」の影響を多く受けています。

注2=このような本来の地を遠く離れ、「激務」にいそしむコロニーには♀の個体や幼若な個体は存在しないか、極めて少ないという設定にしており、ここで出てくる彼等は♂で若く、彼等の中では比較的頑強な個体が多い感じで設定しました。
また、彼らの♀が極端に少なくなった原因の一つとして、遺伝子操作の失敗を考えました。
自分達の種族の優秀な(そのときの彼らの価値観で)発現形質(この作品ではテレパシーを想定しています)を持つ遺伝子のみを増長させ、好ましくない(そのときの彼らの価値観で)形質の遺伝子を排除することを、長い世代繰り返していくと、あたかも近交係数が極端に高まった状態になり、種としての活力が失われていくような状態です。結果、たまたま彼らが求める遺伝形質を追求すると♀の出生率が極端に低くなったということでしょうか。
遅まきながらそれに気付いた彼らは、「新しい血」を導入するために異種の女性を求めました・・・特に彼らが失った「体格の良い」女性を
形質の特殊化は大きな問題で、たとえば地球の生物の進化でも、ある分野に極度に進化したものは、環境が変化したときに滅んでいることが多いみたいです。
種の中のバリエーション(形質や考え方も含めて)も少なくなります。
こうしたことから、彼等の行動パターンや習性が限定され、彼女に逆用されるといった設定が生まれました。(例えば、われわれがペットを飼う時に本を調べれば、ほとんどの対象物の習性が網羅されているようなものです)

注3=ヒューマノイド系なので、やはり蛋白質系の体を想定しました。
このような生体が有効に生命活動に必要なエネルギーを得るには、酸素を利用する方法が最も効率的と考えました。
酸素をGETするにはヘモグロビンやクロロフィルなどのように一種の色素蛋白質で金属をキレートするようなものが良いのでは・・・・無論、この話での宇宙人の設定ではそれほど運動量が激しくないので、必要とする酸素量は人類と異なります。
その為、ヘモグロビンである必要はなく、青系〜緑系あるいは黄色などの色の血液もありうると考えました。
昔からある宇宙人の伝承などでも、血液の色が透明ではなく、青とか緑とか色付きで伝えられるのは、そういった理由かもしれないと勝手に考えております。

後記:もっと、天文学的設定や様々なメカとその原理、彼等の組織の背景と犯罪歴や手口、彼等の習性も描こうと思ってましたが、収拾がつかなくなりそうなうえ、クラッシュとは関係ないのでやめました。




No019〜021共通のエピローグ

【エピローグ】

「報告完了・・」
彼女は陰気なビルの谷間にいた。
数メートル先の通りには、夥しい人が行き来している。

彼等の作った空間の圧縮作業は、ごく簡単に終了した。
圧縮して容積が変化した分だけ生じた空間の歪は、石ころを落として波立った水面が穏やかになっていくのと同じように、次第に消えた。
彼女は、足元にマッチ箱程度の大きに圧縮された「さっきまでの戦場」を置くと、彼女は厚底ブーツで踏みつけた。
圧縮された空間は、彼等の遺体を収容したまま砕け散った。
再び僅かな空間の歪が生じたが、それも消えると、彼等の遺体はもちろん、存在した痕跡さえも、靴底の下で消えたようだった。

彼女はビルの間から通りへ出て、雑踏に紛れた。

数時間後、スッキリした表情で、再び雑踏に消えていく彼女の姿があった。

彼女が後にした部屋では、彼女に声を掛けた男が全裸で横たわっていた。
彼女に「採取」されたサンプルだった。
幸運?な彼は、彼女にとって恰好の捌け口となった。

彼女と部屋に入り・・・
そこでは、彼の脳では全く処理しきれない快楽が彼を襲った。
しかし、彼女はそんな彼に構わず、自分の快楽を求め続けた。
彼は、彼女の欲求を満たすための道具として扱われ、彼の脳と肉体は果てつづけさせられた・・・・

彼の体は、わずか一時間ほどで一回り小さくなったかのように見えた。
命には別状はなかったが、彼女に与えられた快楽によって彼の脳の一部が破壊され、二度と通常の生活を行なうレベルに回復することはなかった。

やがて、彼女は、自分が満足すると、彼を残して立ち去った。

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