彼は、仲間と共に暗く暖かい排水溝に住んでいた。 この日も、暗くなると活動をはじめた彼らだったが、間もなく足音と共に、近づいてくる人間の気配を感じ、じっと息を潜め警戒態勢に入った。 ドアが開き、人間が入ってくる音が聞こえた。 しかし、それは一瞬で、すぐに入ってきたのが誰であるかわかった。 彼らの優れた嗅覚と聴覚が、入ってきた人物を認識したからだ。 明かりが付き、排水溝の一角に光が差し込む。 彼らがいつもの場所から顔を出すと、彼女が立っていた。 ブーツの皮の臭いが彼を刺激した。 彼女が手を伸ばすと、彼らは皮の臭いに警戒しながら近づき、彼女の手を嗅いだ。 皮の臭いは、彼らを警戒させたが、皮の臭いにまじって、確かに彼女の香りがした。 その匂いに彼らは安心して、さらに彼女の手に近づく。 彼らは、彼女がいつもと違うことに気づいた。 いつもより彼女の匂いが濃く感じたからだ。 心地よく、高ぶらせる匂いだ。 彼らが、その匂いに酔ったように気分になっていると、彼女の手が伸び、彼の背中をつかんで、持ち上げた。 そして、黒い袋に入れられ、視界が暗くなった。 袋の口が閉じられ、持ち上げられると彼の重みでビニールが体にまとわり付き、うっとうしかった。 恐怖感はなかった。 すぐに照明が消えたのがわかり、移動し始めたのを感じた。 彼は少し恐怖心を感じたが、まだ彼女の匂いに酔った気分だった。 彼を入れた袋は、やがて移動を停止し、床に置かれた。 袋の口が開けられると、彼にとっては強烈な光が差し込み、彼の目が一瞬くらんだ。 あたりを見回したが、まったく知らない場所だ。 彼が、思わず固まってうずくまっていると、巨大なブーツのつま先が彼に迫った。 強烈な皮の臭いがするそれは、彼を簡単に転がした。 彼は、本能的に姿勢を保とうとしたが、その前に巨大なブーツは彼を仰向けのまま床に押さえつけた。 彼は、腹にかぶさるブーツを抱え込む態勢になってしまった。彼は必死で首を上げ、状況を確認しようとした。 彼のあまりよくない目に見えたのは、所々光沢のある皮のブーツが目の前に壁のように立ち、はるか上に続いている光景だった。 壁は上のほうで、彼女が何かしているのがわかったが、何をしようとしているのかは、彼には解からなかった。 彼は、押さえつけられながら、彼女の匂いがさっきより確実に強くなったのを感じた。 彼が「メス」の匂いを嗅ぐことに意識を集中していると、上のほうから、 「どうせつかまったら、殺されるんだから・・・・あたしに殺されるほうがいいでしょ?・・・でも、簡単に死なないようにしてあげるから」 という彼女の声がした。 無論、彼には理解できなかった。 すぐに、彼女は上から覆い被さるように屈み込んできた。 彼女の顔が確認できる距離まで近づいた。 と、腹を押さえていたブーツが少しずれ、体が楽になるかと思ったとき、刺すような痛みが彼の左下腹部(彼女から見て右側)に走った。 何かが腹に入ってくる感触がしたが、彼は体を硬くして、それに耐えた。 数秒で、それが引き抜かれていく気配を感じたが、抜くときに自分の肉がそれにまとわりつくような感覚が、彼にとっては気持ち悪かった。 「少ししたら効いて来るからね」 ブーツが体からどけられ、楽にはなったが、環境の変化と注射のショックと彼女の匂いによる刺激が加わり、頭の中はやたらと興奮しているのに、体がいうことを聞かなかった。 彼は、体が回復するまで動くのをあきらめた。 彼は、すぐに体が回復すると思っていたが、かえってダルくなったことに焦りを感じていた。 頭の中は異常に冴え、いつもより感覚がとぎすまされた感じだ。 しかし、体が動かない。 いけないと感じつつ、彼女の匂いに頭が支配されそうだ。 自然に鼻がひくつく。 「じゃぁ、そろそろいくよ」 再び彼女の声が、上から聞こえると、ブーツがまたも彼のやわらかい腹を押さえつけた。 すごい力だ。 圧迫され、思わず鳴き声がもれる。 薬品が効いているのか、重さは感じるが、痛みはない。腹がしびれる感覚だ。 必死で、何が起こっているのかを確認するため、首を上げ自分の腹を確認しようとするが、巨大なブーツしか見えなかった。 彼は、手足を足掻いた。 「効いてきたみたいね。」 そのとたん、ブーツに力が加わった。 激痛と共にかすかな音をたてて、肋骨が数本折れたのを感じた。 痺れの中にも、鈍い痛みを感じた。 「あ、少し折れた。」 彼女の冷静な声が彼の耳に響いた。 彼は声を立てようとしたが、力が入らず、声にならなかった。 彼は押さえつけられて動けず、じっと彼女の足を抱え込む格好で、彼女の次の行動を待った。 彼にできる事は、自分を蹂躙するブーツを見つめるしかなかった。 「踵は使わないであげる…少しは耐えられるでしょ?」 言葉どおり、確かに彼女はヒールでの踏み付けはしなかったが、容赦なく彼の腹を踏んだ。 さらに数本の骨が折れた感覚がし、彼女も骨が折れたことは認識したようだが、全く気に留めてくれなかった。 踏まれつづけるうちに、体の自己防衛のためか、興奮のためかそれとも薬剤が効いたのかは不明だが、彼は痛みが麻痺していることに気づいた。 しかし、意識はやたらとはっきりしている。 感覚も鋭くなり、彼女が動くときの布の擦れるわずかな音や、髪をかきあげる時のわずかな音も聞き逃さなかった。無論、彼を踏みにじる時に発生する音も・・・ 時折、彼女の足が強く踏みつけると、圧迫で鳴き声がもれた。 それは、彼の意思で発する声ではなく、彼女によって強制されたものであった。 何回かは、リズミカルに圧迫され、彼女は踏みつけにあわせて声が漏れるのを楽しんでいるようだった。 「まだ死なないから、大丈夫よ」 何回かの強い踏みつけが続き、彼の口から血があふれた。 彼は、窒息しそうな感覚を感じたが、幸い呼吸は止まらなかった。 大分内臓にもダメージが溜まったようだ。 折れた骨もどうなっているのかわからない。 恐怖は感じたが、それ以上に彼女のすべてを全身で感じたい気持ちだった。 匂いも声も、音も・・・・彼は感覚器に神経を集中した。 そんな彼の気持ちにかかわらず、彼女のブーツは容赦しなかった。 さらに彼女の足が踏みにじると、何かが決壊するような感覚がして、ついに彼は失禁した。 生温かい感覚が彼の下半身を浸した。 ビニール袋に流れた彼の尿には彼女も気付いた。 「おもらししちゃったみたいね。もっと踏めば、いっぱい出るかな?」 彼女は、彼の反応に注意しながら、少し下腹部をしごくように踏みにじってきた。 彼の嗅覚は、彼女の「メスの匂い」がますます高まるのを感じた。 彼の中で、さっきから感じていた「性的な感覚」が高まってくるのがわかった。 彼は思わず、彼に覆い被さっているブーツをなでまわした。 皮の臭いは、本来は彼らの天敵の臭いに近く、彼にとって警戒を必要とする「危険な臭い」だったが、今の彼にはそれが返って彼を興奮させる要因の一つになった。 痛みや恐怖はそれほどでもなかったが、彼は明らかに生命の危険を感じていた。 彼の本能が、命が終わる前に、動物の生きる目的である「子孫を残す」ための「回路」を開放したのかもしれない。 さらに、彼の骨が折れ、何か体の中で大事なものがひしゃげて、つぶれる感覚がした。 再び彼の口から血が流れた。 「ふふ・・・もうすこし楽しませてね。・・・結構あんたの感触、伝わるね。これでもっと音がしたらいいんだけど・・・」 彼女の声が上から降ってくる。 しかし、彼は、彼女の声の中に、彼女の中でもなにか「昂まり」があるのを感じ取った。 彼女の手が机の上の何かを掴むと、耳に当て 彼を踏みつけたまま、彼女は楽しそうに話をし始めた。 「うん、もう終わる。もうすぐ行くから・・・・なんかすっごい興奮してるぅー・・・・今日はあたしが上ね。・・楽しみにしてる・・じゃあ、後で・・・」 話しながら無造作に彼女の足は、彼を踏みにじったり、靴底を押し付けて転がしたりした。 彼も踏まれながら、彼女の声、匂いに刺激されつづけた。 しばらくして彼女は会話が終わるとケイタイを置き、一瞬間を置き、彼から一回足をどけた。 彼の腹の潰れ状況を確認する。 彼は、圧迫から一気に開放されたが、逃げる気持ちもなかった。 一連の刺激と、失血による体力の消耗は、心地よい麻薬に似ていた。 圧迫から開放されて、数秒で彼の「昂まり」は頂点に達し、壊れかかった生殖器は精を漏らした。(注1) 彼の腹のつぶれ具合と、彼の体がビクンと数回動いたのを観察し、 「あーあ、もう逃げても助からないね。」 彼女あくまで冷静にそう言うと、さらに彼の腹を踏みつけてきた。 今までより強い踏み込みに、彼の上体が起き上がり、ブーツにキスをするような体勢になった。 彼の腹から血が飛び、彼女のブーツを汚した。 彼の生殖器は破壊されたが、彼の感覚には関係なかった。 彼の脳は頂点に達したままの感覚を維持したまま思考がとまった。 彼は、自分の体が崩壊するのと自分の血で彼女のブーツが汚れるのを見つめた。 彼女は 「仕上げね」と、彼に宣言し、 もう一度足を上げ、彼の潰れかけた腹と、まだ潰れていない胸から首に掛けての部分を踏み潰した。 彼は、ブーツの脇から自分の腸がはみ出していく感覚を感じた。 出血やショックにもかかわらず、頂点の感覚は続いた。 その感覚の中で、彼の鼻は、彼女の匂いを少しでも多く嗅ぎ取ろうと、最後の努力をしていた。 「そろそろ行かなきゃ」 彼女は彼の頭を踏むと、小さく鈍い音を立てて、彼の頭が砕けた。 迫ってくる彼女の靴底のを網膜に焼き付け、至福の感覚の中で彼の意識は途切れた。 (注1:ラットの精液を採取する(強制的に射精させる)手法を参考に、このような表現を考え付きました。:参考にした手法自体はエーテル麻酔をうまく使った、この手の動物実験では比較的ポピュラーなものです。(欠点は色々ありますが、ラットでは電気刺激法が確立されていないので)/彼が頂点に達するのは、彼女にとっては計算済みだったかも?/しかもその直後に彼の体が数回ビクンと動いたので、彼女が彼の射精を察知したかも?などと考えると面白いかも) |