作品No006

作:eiさん

11月のある日、19:30
彼女は、一人で研究室に残っていた。
卒論まで、まだ若干時間の余裕がある為か、今日は教授やゼミの仲間たちは19:00前には相次いで帰宅していた。
彼女はしばらく文献を読んでいたが、立ち上がり、試薬棚から褐色瓶を1つ取り出し、机に置くと、黒いごみ袋を持って部屋を出た。
そして、部屋の外で黒のロングブーツに履き替え、実験動物棟に向かった。

実験動物棟は、研究室のある建物とは別の、離れにあった。
敷地の一番端で、普段から人気は無く、夜になるとなおさらだ。人気があるのは、朝夕の動物の世話の間と、年に数回の解剖実習の時だけだろうか。
コンクリートの打ちっぱなしの、20畳ほどの平屋の古い建物だ。
管理は、彼女たちゼミの学生が行なっている。
側溝などは外とのトラップも無く、本来ならばまともな実験動物は管理できない場所であるため、実験用の動物や医学系の実験動物は最新の設備を備えた施設で管理されている。
いわばここにいるのは、半ば教授の趣味で飼われている動物か、もしくは学生の実習用の、重要度の低い動物たちである。
わずかに古いエアコンがあるが、ほとんど稼動していない。

彼女が中に入ると、獣特有の臭いが鼻についた。電気をつける。薄暗い部屋に飼育ゲージが20個ほど並んでいるが、彼女はそれには目をくれず、側溝に目をやる。
側溝から、ラットが2匹顔を出す。この部屋で飼われている内に逃げ出したものだ。
これまで、取り扱いの不備などで逃げ出した動物はかなりいる。
排水溝を通じて外との行き来もあるが、この部屋だと餌のストックなどがあり、逃げ出した動物たちは、この部屋を半ば拠点にして外に出掛けるようだ。
そして、そのうち外の方がなじむのか、帰ってこなくなる。
こうして、逃げ出した(時に繁殖までする)動物たちの存在は、教授が普段、この部屋のほとんど顔を出さないこともあって、教授には知られていない。
管理する学生たちも、ときどき物音や姿を見かけるものの、教授に見つからなければ良いと決め込んでいる。
たまに教授が来るときには、逃亡動物が顔を出さないよう、学生たちは気を配った。
だから学生たちは、側溝の奥で人知れず死んだのか、外へ永住の地を求めたのかは判らないが、いつのまにか逃亡動物が姿を消すと、ホッとする。

彼女は、ゼミに入った頃から、逃げたラットを次第に2匹を慣らしていた。
ラットは比較的飼いならしやすい動物だ。
彼女が他の動物の世話をしている時にたまたま顔を出したに2匹に餌をやったのがきっかけで、それはすぐに習慣化した。
彼女がゼミに入って半年以上たった今は、彼女の手から餌を食べるほどになっていた。
彼女が手を伸ばすと、ラットたちは近寄ってきて、彼女の手の匂いを嗅ぎ、安心したような仕草になった。
彼女はそのうちの1匹を無造作に掴み、ごみ袋に入れる。

そのまま、電気を消して実験動物棟から戻った彼女は、部屋履きのサンダルに履き替えず、ブーツのまま部屋に入った。
部屋に入り、彼女の机の脇に置き、ごみ袋を開けると、彼は目をきょろきょろさせながら、急に明るいところへ出た事に戸惑い、うずくまった。
彼女はうずくまった彼をブーツの爪先で転がした。
彼は、仰向けになったがすぐに、姿勢を直そうとした。しかし、彼女の右足がその前に、彼の腹を踏み抑えた。
彼は彼女のブーツを腹に抱え込む姿勢で押さえつけられた。
彼女は、口元に笑いを浮かべ、机の上に用意した褐色ビンに入った薬品を、シリンジに取った。
使い捨ての注射針をシリンジの先に装着して、空気を押し出す。
「どうせつかまったら、殺されるんだから・・・・あたしに殺されるほうがいいでしょ?・・・でも、簡単に死なないようにしてあげるから」
彼女は彼を、踏み抑えたまま屈み、手を添え固定すると、足を少しずらして、彼の腹を見えるようにし、慣れた手つきで彼の右下腹部に注射針を突き立て、彼の腹腔に注射をした。
そして、指先でねじるように注射針を引き抜く。
「少ししたら効いて来るからね」
彼女が足を離したが、彼は逃げようとせず、そのまま横たわったままだった。
しきりに鼻をひくつかせている。
「じゃぁ、そろそろいくよ」
彼女は再び彼の腹の上に足を乗せる。
彼女が、足に体重をかけると、彼の鳴き声が漏れた。
彼女は声を立てずに嗤った。ここに至って、彼は危機を感じたのかしきりに手足をあがいた。
しかし、全く彼女には通じず、空しく皮製のブーツの表面に撫でまわすような仕草となった。
「効いてきたみたいね。」
彼の様子を見て呟くように彼女が言うと、さらに体重を掛ける。
何かが折れる音と一緒に、彼女の足にも靴底を通して感触が伝わる。
「あ、少し折れた。」
彼は押さえつけられて動けず、じっと彼女の足を抱え込む格好で、彼女の次の行動を待った。
その彼のしぐさが、彼女の攻撃を必死で耐えているようで、彼女は口元に笑みを浮かべた。
「踵は使わないであげる…少しは耐えられるでしょ?」
言葉どおり、確かに彼女はヒールでの踏み付けはしなかったが、容赦なく彼の腹を踏んだ。

彼女は、彼の反応を見ながら踏む力を加減した。
彼女が力を入れるたびに、彼の口から、鳴き声が漏れる。

「まだ死なないから、大丈夫よ」

そのうち彼の口から血がこぼれた。
大分内臓にもダメージが溜まったようだ。
折れた骨もどうなっているのかわからない。
さらに彼女の足が踏みにじると、ついに彼は失禁した。
ビニール袋に流れた、彼の尿に彼女が気付いていた。
「おもらししちゃったみたいね。もっと踏めば、いっぱい出るかな?」
彼女は、彼の反応に注意しながら、少し踏みにじるように体重を加えた。
彼の手は新たな荷重に反応して、彼女のブーツの表面を撫でまわすように動いていた。
しかし、彼の骨が新たに数本折れたのみで、尿はこれ以上でなかった。
彼の口から血が流れる。
「ふふ・・・もうすこし楽しませてね。・・・結構あんたの感触、伝わるね。これでもっと音がしたらいいんだけど・・・」
彼女の手が机の上のケイタイに伸びる。

彼を踏みつけたまま、彼女は楽しそうにオトコと話をする。

「うん、もう終わる。もうすぐ行くから・・・・なんかすっごい興奮してるぅー・・・・今日はあたしが上ね。・・楽しみにしてる・・じゃあ、後で・・・」
話しながら無造作に彼女の足は、彼を踏みにじったり、靴底を押し付けて転がしたりした。

オトコとの会話が終わるとケイタイを置き、一瞬間を置き、彼から一回足をどけた。
彼の腹の潰れ状況を確認する。
「あーあ、もう逃げても助からないね。」
彼女そう言うと、さらに彼の腹を踏む。
今までより強い踏み込みに、再び鳴き声を発するとともについに彼の腹からも血が飛び、彼女のブーツを汚した。
彼女は気にとめず
「仕上げね」と、彼の潰れかけた腹と、まだ潰れていない胸から首に掛けての部分を踏み潰した。
彼女のブーツの脇から腸がはみ出る。
しかし、彼は出血やショックにもかかわらず、確実にまだ生きていおり、鼻をひくつかせていたが、
「そろそろ行かなきゃ」
彼女は彼の頭を踏むと、小さく鈍い音を立てて、彼の頭が砕けた。

最後に踏みにじると、彼女はブーツを通してゴリゴリした硬いものがより小さくなる感触を感じた。
彼の頭を踏んだまま、すぐ脇にあるイスに手を伸ばし、イスを引き寄せた。
そのまま腰掛けると、脚を組み、右足に履いたブーツについた血をティッシュで拭き取る。
ブーツについた「彼の生きていた痕跡」は、一拭きで彼女に消された。

彼女は、丸めたティッシュを袋の中に捨てながら、袋の中の彼の残骸に、
「潰した後のセックスって、なんかいつもよりイイんだよねー」
少し弁解じみた言葉を掛けた。
そして、そのままごみ袋の口を縛り、身支度と戸締りをして部屋を出た。
20:45

敷地から出る途中、焼却炉にごみ袋を入れるとき、
「バイバイ。さびしくないよね。たくさん仲間いるから。それにもう一匹のお友達も、もうすぐ会えるようにしてあげるね。」
と声を掛け、帰って行った。

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